AIの次なるトレンドは「リビング・インテリジェンス」だ
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サマリー:AIは、現在進行中の大規模な技術革新の一要素にすぎず、他の重要な技術を見落とす企業は、取り残されるリスクがある。その技術とは、高度センサーとバイオテクノロジーである。AIとこれら2つの技術を融合した「リビ... もっと見るング・インテリジェンス」が、新たな現実を形成し、あらゆる業界のリーダーたちの意思決定に大きな影響を及ぼす時代が到来しようとしている。 閉じる

AIは技術革新の一要素でしかない

 最近、筆者はあるグローバルなヘルスケアサービス企業の幹部チームとテーブルを挟んで座っていた。その振る舞いから、何かまずいことが起きているらしいと感じた。この日、筆者はその会社のAI戦略について相談に乗るために招かれたが、相手の態度が弁解がましく見えたのだ。

 同社のCIOは、鋭敏な人物で、新しいテクノロジーについても十分に研究していることは明らかだった。そしてこの人物は、自社の新しい大規模言語モデル(LLM)について詳しく説明し始めた。たしかに、それは素晴らしい内容だった。

 この会社が導入したLLMは、果てしなく複雑なデータ入力プロセスを自動化した。膨大な手書きの患者記録や、さまざまな種類のデジタルファイルが無秩序に混在しており、それらすべてを一貫した単一の記録に統合したのだ。開発とテストに要した期間は1年以上で、当然、同社の面々は自社の成果に誇りを抱いていた。

 しかし、CIOの説明を聞くうちに、筆者は気づいた。この会社は、すでに後れを取っていたのである。

「素晴らしい土台を築いていますね」と筆者は述べた。「しかし、まだスタートラインに立ったにすぎません」。すると、その場の空気が明らかに変わった。彼らはこのような筆者の反応を予想していなかったのだろう。

 同社は、AIに莫大な投資を行って高度なシステムを構築し、試験プロジェクトも成功させていた。過去1年間にAI関連のツールの開発と導入を進めた多くの企業の幹部チームがそうであるように、やるべきことはすべて終えたと思っていたのだ。

 実際に、同社の変革の取り組みはまだ始まったばかりだった。AIは、いま急速に進行している技術革新の一要素でしかない。他の新しいテクノロジーの重要性を見落としている企業は、変化から取り残されるリスクがある。

「リビング・インテリジェンス」の時代

 筆者はこの幹部チームに対し、いまAIを非常に重視していることは、後れを取ったとはいえ、正しい判断であると述べた。しかし、LLMはただの出発点にすぎない。驚異的なペースで新しい進歩が実現している状況では、変革を継続するための新しい力を育むことが不可欠だ。