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失われてしまった顧客との接点を取り戻す
編集部(以下色文字):2024年2月、ローソンの株式を三菱商事とKDDIが50%ずつ保有する共同経営体制への移行を発表し、大きな話題となりました。2025年春には「未来のコンビニ」と称する新たな店舗をオープン予定とのことですが、業態が大きく異なるコンビニエンスストア事業において、KDDIはどのような役割を果たしていくのでしょうか。
髙橋(以下略):現在、多くのパートナー企業と協業を行っていますが、私たちはあくまでも通信会社です。事業の核である通信やテクノロジーをパートナー企業の事業に組み込み、さらなる発展を促すことが役割だと考えています。
正直なところ、ローソンの株式取得については、その発表直後に投資家の方々から多くの厳しい声をいただきました。なぜ利益率の高い通信会社が利益率の低い業態である小売りに投資をするのか。そのような投資判断をするくらいであれば、他の業界に投資をするか、投資家に還元すべきだというわけです。実際、2024年の上半期に日経平均株価が34年ぶりの高値を更新する中で、当社の株価はローソン株式取得の発表から半年ほど低迷しました。
この投資の意義をご理解いただくために、海外の投資家を中心に、ローソンの共同経営に乗り出すことで何を狙っているのかを一生懸命に説明して回りました。そうした中で、2024年の夏に西海岸にあるビッグテック企業を訪ね歩いたところ、日本で約1万4600店舗を展開するローソンは重要な顧客接点になるので、何か一緒にできないかという提案をたくさんもらいました。私たちと組むことでソーシャルインパクトを与えられるというのです。
理解してくれる企業もいるのだと知って、心強く感じています。我々のテクノロジーを組み入れ、送客の仕組みを整えるなど、いまではローソンの発展にベクトルを向けて、全社で取り組んでいるところです。
投資家などからの厳しい声は想定されていたことだと思います。それでもローソンへの出資を決断したのはなぜですか。
フィーチャーフォンが携帯電話の主流だった時代は、私たちのような通信会社が携帯電話端末からコンテンツ、アプリケーションなどを通信インフラとともに包括的に提供する垂直統合モデルを展開し、お客様と密に接点を持っていました。しかし、スマートフォンの登場とともに、サービスを提供する環境を不用意にオープン化してしまったことで、お客様との接点が薄れてしまいました。
通信会社は、いまや携帯電話事業だけでは生き残れない時代です。そこで、お客様との接点を再び取り戻したいという思いから、通信以外のサービスも提供してきました。たとえば、決済サービスであるau PAYのような金融サービスや電気をはじめとしたエネルギーサービスなどが挙げられます。