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購入レビュー11万件を分析
消費者がオンラインレビューを重視することはよく知られている。98%もの消費者が、購入の意思決定をする際にレビューを参考にしており、購入を検討する時に考慮する要因の第1位として、商品説明ではなく、レビューを挙げる消費者もいる。
消費者は、レビューの特徴(商品の数値評価、レビューの数、レビュアーの身元など)だけでなく、レビューの内容自体も重視している。レビュアーが商品を推薦する、あるいは再び購入すると述べているなど「ロイヤルティエクスプレッション」(忠誠心の表現)と呼ばれるポジティブな内容を含むかどうかなどだ。
当然ながら、企業はこうしたレビューの説得力を利用して売上げを伸ばそうとしてきた。多くの企業は、商品のレビューを書いた顧客にインセンティブを提供し、レビューの中でその商品を勧めるよう、あからさまに促す企業もある。ベストバイ、ターゲット、メイシーズ、コストコなどは、推奨しているものをレビューの最初のページに掲載するなどして、顧客の目につきやすくしている。
顧客、ひいては小売業者にとって、オンラインレビューが重要であることを踏まえ、筆者らは次の疑問を抱いた。あるレビューが他のレビューよりも説得力があるのはなぜか。「この商品はお勧め」と言うのと、「この商品をまた買う」(「再購入意向」)と言うのでは、どちらのほうが影響力があるのか。レビューされる製品のタイプによって違いはあるのだろうか。
これらの疑問を解くため、筆者らは研究を行い、『ジャーナル・オブ・リテーリング』誌に発表した。オンライン購入レビュー11万1728件を分析し、2000人以上を対象にホテルの宿泊、ワインボトル、レストランでの食事、歯科治療など、さまざまな商品やサービスの購入を検討してもらう7つの実験を行った。その結果、それぞれのロイヤルティエクスプレッションの説得力は、商品の購入頻度によって異なることが明らかになった。
購入頻度の高いものと低いもの
最初の研究では、イェルプのオンラインレビュー11万1728件を調べた。イェルプでは、レビューが「役に立った」場合はユーザーがマークをつけることができ、「役に立った」とマークされた件数が多いレビューが上位に表示されるように並べ替えることができる。筆者らの仮説を裏づけるように、人々がサービスを推薦する、あるいは再びサービスを利用すると表明したレビューは、こうしたロイヤルティエクスプレッションを含まないレビューよりも、「役に立った」と認識されていることがわかった。再購入意向を示したレビューは、ユーザーに「役に立った」と評価される確率が最も高かった。
データを分析したところ、サンプルのレビューの大半は、ワインやディナーのように人々が頻繁に購入する商品やサービスに対するものであることが推測された。再購入意向は、車など購入頻度が低い商品に対しても最も説得力のある表現なのだろうか。
このことに加え、レビューの説得力において信頼性が果たす役割も検証するため、オンライン参加者2000人以上に、ワインボトルから歯科医院での被せ物の治療まで、さまざまな商品やサービスの購入を想像してもらう7つの追跡実験を行った。
ロイヤルティエクスプレッションのうち、どれが最も説得力があるかは、その商品の購入頻度によって決まることがわかった。参加者に、ワインや歯のクリーニングのように、定期的に支払いを行う商品やサービスを想像してもらった実験では、「再購入意向」を示したレビューが最も説得力があった。歯の被せ物など、購入頻度の低い商品やサービスに関するレビューを評価してもらった場合は、そのサービスを「推薦する」レビューが最も説得力が高かった。
この結果は、参加者が、その状況においてそれらの表現が最も信用できると考えたからだ。頻繁に購入する商品であれば、単に勧めるよりも「再び購入する」と言ったほうがより適当であり、より信頼できる推奨の言葉だと認識される可能性が高い。逆に、頻繁に購入しないものの場合、レビュアーが「また買う」と言っても、信頼性が低いと思われ、推薦のほうが説得力がある。筆者らの調査によれば、信頼性と説得力は関連しており、レビューの信頼性が高いと思われるほど、その内容が購買決定を左右する可能性が高くなる。