組織内の軋轢は避けられない

 マネジャーにとって、人と人の間に生じた不一致や対立に対処するのはつらいことだ。とはいえ、マネジャーにとって意見の違いや口論、あからさまな対立は、避けて通れない問題である。

 こうした局面においてマネジャーは、2つの気持ちに自分自身が引き裂かれそうになるものだ。部下の潜在能力を存分に引き出して新たな創造的アプローチを獲得するためにも、その個性を全面的に尊重したい。そう考える一方で、組織の目標を達成するためには、調和の取れた、仕事が円滑に進められる体制をつくりたいと切望するからだ。

 そして、いざ対立が生じた時、マネジャーはどうしても感情的になり、客観的立場を見失い、自我にさいなまれ、人間関係の危機にさらされることになる。

 組織内に対立があれば、マネジャーの仕事はどうしても複雑になる。そのため、不一致を十分に理解し、適切に処理する能力を身につけていることが重要になってくる。仕事を一緒にしている人々の中に存在する不一致や対立についての理解を深め、問題解決能力を向上させ、より有効なマネジメントのあり方を見つけることができるよう、マネジャーを支援することが本稿の目的である。

 まず、部下の間に生じる不一致に焦点を当てていくが、本稿を通して述べる原理、コンセプト、方法、力学は、グループ間や組織間はもちろんのこと、国際間にも応用できるものである。

 対立をうまく処理するマネジャーの能力は、次のような能力によって決まってくる、というのが本稿の基本テーマである。

・不一致を見極め、理解する能力。

・さまざまな対処法があることを認識し、適切なものを選択する能力[注1]