前略CEO殿

 先日の取締役会について、いろいろ思うところがあり、この手紙をしたためました。

 第3四半期の業績もすこぶる好調で、年間を通して予想業績が改善されたことについては、取締役一同、心強く感じました。価格を下げたにもかかわらず、粗利益が安定したのは、あなたが決断したコスト削減策が、取りも直さず成功したということです。大局的には、嵐を乗り切ったといえるでしょう。

 業績に好転の兆しが見えてきたことは何よりです。しかし、それと同時に今後1、2年間は難問続きではないかという気がしてなりません。

 状況が落ち着きを取り戻したといっても、やっと一息つけるかどうかといったところでしょう。当社もご多分に漏れず、レイオフを何度も繰り返した挙げ句、いまや労働力は弱体化しています。明らかに業界内の生産力は過剰の域にあります。

 また、市場シェアをめぐる争いは、終息の兆しも見えません。どの企業が価格競争を仕掛けたのか、いまとなっては判然としませんが──少なくとも当社ではないでしょう──その影響が利幅や市場シェアに生じ始めたことは確かです。

 そのうえ、同業他社が業績を修正したり、何とも創造的な決算報告を行ったりしたため、今後数カ月、当社も厳しい査察を受けることになります。つまり、あなたは今後多忙を極めることになるでしょう。

 だからこそいま、際立った問題ではありませんが、重要な問題についてご進言申し上げる次第です。

 このような先行き不透明な時期にあって、あなたは企業の舵を取らなければなりません。このように申し上げると、評論家よろしく、いつものような指摘を繰り返すのかと思われるかもしれませんが、私が進言いたしたいことは、将来に向けた経営陣の役割と責任についてであります。