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CEO解任はブームなのか
1995年春、Kマートは経営不振に陥っていた。かつてはアメリカ小売業界のトップの座にあったにもかかわらず、ウォルマート・ストアーズなどのライバルによって次第にその牙城を崩されつつあったのだ。
92年に過去最高の売上げと黒字を計上したが、以来8期連続して利益は期待外れに終わっていた。株価も74%も下落していた。株主からの執拗な圧力に屈して、取締役会はCEOのジョゼフ・アントニーニを解任した。そして、鳴り物入りでフロイド・ホールを社外より迎え入れ、アントニーニの後釜に据えた。
ホールはライバルのターゲットとグランド・ユニオンの経営幹部を務めた経験の持ち主で、証券市場を沸かせ、低迷していたKマート株は8%反発した。ところが、この活況も長くは続かなかった。
間もなくしてKマートの業績は再び悪化し、株価も一段と下がり始めた。そして2000年、ホールはチャールズ・コナウェイと交替させられた。またしても社外からの抜擢人事だった。しかし2年も経たずして、同社は破産法の適用を申請した。
たしかにKマートの交替劇は極端な例ではある。しかし、珍しい話でもない。実際、業績が急激に悪化すると、いきおいCEOを解任するというのがアメリカ産業界では日常茶飯事になりつつある。その理由を理解するのは難しくない。
いまや企業価値を株価で判断する時代となり、投資家たちからCEOは企業業績を左右する主要因と見なされている。業績が好調であれば、CEOは給与やボーナスをふんだんに与えられ、称賛も浴びる。逆に調子が悪ければ、CEOは手厳しい非難を浴び、ついには追い出される。
ここ数年、アメリカで解任させられたCEOの数は多く、しかも増加する傾向にある。Kマートのアントニーニとホールに加えて、コカ・コーラのダグラス・アイベスター、フォード・モーターのジャック・ナッサー、そしてプロクター・アンド・ギャンブルのダーク・イェーガーといった名前が挙げられよう。
また、これはヨーロッパにも飛び火しつつある。