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人手も予算も限られる中、ブランドの再構築に挑む
編集部(以下色文字):バーガーキングはここ数年で飛躍的な成長を実現し、店舗数や売上高を急拡大しています。過去には日本から撤退した歴史を持つなど、経営が思うようにいかない時期も続きましたが、野村さんがバーガーキングの運営元であるビーケージャパンホールディングスに入社した頃、どのような課題を抱えていたのでしょうか。ご自身の入社の経緯と合わせて、お聞かせください。
野村(以下略):私は大学卒業後にキリンビールで営業やマーケティングを担当し、その後に数社の転職を経験して、直近では外資系の通信機器メーカーに勤めていました。しかし、ある問題が起きたことで取引が一気になくなり、次の転職先を探さなければならない状況を迎え、その時に紹介を受けたのがビーケージャパンホールディングスでした。
私は当初、この会社がバーガーキングの運営元だとわかりませんでした。QSR(クイックサービスレストラン)を長年展開し、店舗数は100店と聞いたのですが、調べてもそのような会社は出てこなかったのです。その理由は、バーガーキングの歴史が複雑で、日本の運営元が何度か変わっていたからです。
バーガーキングは1993年に日本への進出を果たしましたが、2001年にいったん撤退しました。2006年にロッテとファンドが共同でバーガーキング・ジャパンを立ち上げ、2007年には日本国内での出店を再開したものの経営は思うようにいかなかったと聞いています。同社は2010年にロッテリアの韓国法人に買収されたのですが、以降も出店を拡大できませんでした。
その後、2017年にプライベートエクイティ(PE)ファンドのアフィニティ・エクイティ・パートナーズがバーガーキングとフランチャイズ契約を結んで、ビーケージャパンホールディングスを設立しました。その時点でロッテリアとの契約は終了となり、しばらくはロッテリア系列の店舗とビーケージャパン系列の店舗が併存していたのですが、ビーケージャパンによるバーガーキング・ジャパンの買収が決まると、2019年5月にロッテリア系列のうち22店舗が閉店となり、同年9月からビーケージャパンが単独で運営を担うことになりました。
要するに、私がビーケージャパンを紹介されたのはバーガーキング・ジャパンの買収前で、QSRとして100店舗を展開という数字には、ロッテリア系列の店舗も含まれていたのです。私は2019年5月に入社したので、直後に20店舗以上を失うこととなり、そのインパクトは想像以上でした。
そのような経緯から店舗数が一気に減り、ビーケージャパンは自前の店舗も思うように増やせていなかったので、私が入社した頃はとにかくお金がありません。歴史あるハンバーガーチェーンというよりも完全にスタートアップのような状況でした。
自社のオフィスも持たず、ウィーワークの一室を借りていましたが、広くないので常に10人くらいはあぶれてラウンジで働いていました。当時の社員数は40人程度だったにもかかわらず、同じ部屋で働けないので同僚の顔がわかりません。自分の部下がいつ来て、いつ帰ったかも把握できませんでした。専用のミーティングルームはなく、別の部屋を借りるとお金がかかるので、ほとんど立ち話で済ませるような環境でした。