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プロジェクトの立ち上げは
シリアルアントレプレナーに学べ
予測可能な世界では、新しいプロジェクトがどのようにして始まるか、誰もが知っている。チームが編成され、市場分析、予測、事業計画の立案が行われる。それからリソースが集められ、計画が動き出すのだ。
しかし、予測不可能な環境では、どのように新しいプロジェクトを立ち上げたらよいのだろうか。データや意見が氾濫し、本当に決め手となる分析が不可能な時代、遠く離れた出来事がすぐに予期せぬ影響をもたらす時代、そして、停滞する経済の中で、有効性の不確かなアイデアに賭けることを企業が躊躇する時代にプロジェクトを始める最善の方法とは何だろうか。
リスクを最小限にしつつ、極めて不確実な状況を切り抜けるエキスパート、シリアルアントレプレナーのやり方を参考にしよう。
筆者ら学術界やコンサルティング業界の関係者は、このようなシリアルアントレプレナーたちと彼らのロジックを長年研究してきた。そのロジックで、彼らは旧来の分析、予測、シミュレーション、計画、配分といった手法が機能しない状況において、新しい製品やサービス、ビジネスモデルを生み出してきたのである。
バージニア大学ダーデンスクール・オブ・ビジネスの教授(本稿執筆当時は准教授)で経営学を担当しているサラス D. サラスバシーは最も驚くべき研究を行っている。彼が27人のシリアルアントレプレナーを詳細に調査したところ、いくつもの共通する行動が明らかになったのだ。
これら起業家は、あらかじめ決められた目標ありきでスタートするのではなく、チャンスが訪れるのに任せる。最善のリターンを得ることに注力するのではなく、どれだけの損失を許容できるか考えることに時間を費やす。そして、完璧な解決策を求めるのではなく、十分に通用する程度の解決策を探すのである。
重要なのは、成功する起業家は単に「think different」というだけではないということだ。彼らはその考えを即座に行動に移す。分析を回避したり、無視したりすることもよくある。未来を予測するのではなく、創造しようとするのである。
筆者らは、さまざまな業界で事業を立ち上げたクライアントやかつての教え子たちを通じ、このことを目の当たりにしてきた。スターバックスの元会長兼CEO、ハワード・シュルツの例もある。彼が、のちに数十億ドル規模のビジネスへと成長するカフェのコンセプトを発案するまでの20年間、コーヒーの売上げは減少を続けていた。
彼らのロジックは、従来の組織の枠を出て仕事をする起業家のみに限定されるべきではない(何しろ、シュルツが最初にカフェのアイデアを試したのは、スターバックスがコーヒー豆や紅茶、スパイスを扱う小さな小売店で、彼がそのマーケティング部長だった頃なのだ)。