プロジェクトマネジャーとは、組織のリソースを使い、プロジェクト(目標、課題など)を達成するための総責任者である。

 不確実性の質が変化する中で、企業が直面する課題は増え続け、その難易度も著しく高くなっているのだ(図表1を参照)。そのため、組織は変化の早い中で、(1)プロジェクト戦略、(2)成功の仕組み、(3)プロジェクトマネジャーの育成を組織的な仕組みに取り入れる必要がある。どんなに良いビジョンや計画でも、実行できるプロジェクトマネジャーがいないと組織は成果を得ることができない。

 ディスラプター(市場の破壊者)に立ち向かうためのビジネスモデル変革や新商品の開発、未開拓市場への挑戦、より競争力が高い製品供給体制を確立するためのグローバルサプライチェーン変革など、これまでの“成功パターン”の踏襲ではなく、新たな勝ち筋を見出す必要がある。それには情報を集めて方向性を定め、課題解決や目標達成に向けて複数のプロジェクトを同時に成功させる必要がある。

 そうしたプロジェクトを引っ張り、企業の成長を支えていくのがプロジェクトマネジャーの役目だ。

 アイシンクは、2000年の創業以来、そうしたプロジェクトマネジャーを育成するサービスを中心に、企業のプロジェクトマネジメントを強化するためのさまざまなサービスを四半世紀にわたって提供し続けている。

 プロジェクトマネジメントに特化した教育やコンサルティングを、これほど長きにわたって支援している企業は日本では珍しい。

「これまでに支援してきた企業は160社以上。業種も、IT、製造、製薬、航空宇宙、広告代理店など、さまざまです。単に知識を習得するための教育ではなく、実践に役立ち、課題解決や目標達成を実現してくれる人材を育て上げられることが、多くの企業に支持されている理由であると認識しています」と伊藤氏は語る。

求められているプロマネの姿とは

 アイシンクは「すべてのプロジェクトを成功させる」ことを、自社のビジョンとして掲げている。

 現在、あらゆる企業が変化に対応するため、大小さまざまなプロジェクトを立ち上げているが、その成功率は必ずしも高いとはいえない。

「プロジェクトにおける成功とは、投入するコストや、定められた期間の中で、要求通りの成果を挙げること。それがうまくいかない原因には、リソースの配分や進め方が間違っているといった内部要因や、プロジェクトの途中でルールや市場ニーズが大きく変わるといった外部要因があります。後者は予想困難なので、影響を受けるのも仕方がないといえるかもしれませんが、プロジェクトマネジャーには、どんなに状況が変化しても、それに合わせてやり方を変え、何としても目標を達成しようとする強い意志と柔軟性の高さが求められます」と伊藤氏。

 プロジェクトマネジメントの手法には、米国で体系化されたPMBOKや英国のPRINCE2など、さまざまな方法論があるが、教科書通りの進め方だけでなく、自分なりの哲学(原理・原則)に沿って、柔軟な姿勢で前に進めようとするプロジェクトマネジャーの存在が、プロジェクトを成功に導く原動力になるというのだ(図表2を参照)。

「優秀なプロジェクトマネジャーは、仮にプロジェクトの成果が挙がらなかったとしても、『なぜ、うまくいかなかったのか』と振り返り、そこで学んだ教訓やノウハウを次の機会に活かそうとします。その結果、プロジェクトの成功確率は少しずつ高まっていくのです。不確実の質の変化とともに、プロジェクトの難易度もどんどん上がっていますが、そうした時代においてプロジェクトの成功率を高めていくためには、教訓やノウハウを積み重ねていくしかありません」(伊藤氏)

 伊藤氏は、教科書通りではなく状況に応じて柔軟に手法を変え、新たなノウハウを創出できるプロフェッショナル・プロジェクトマネジャーを「狩猟型プロジェクトマネジャー」と呼ぶ。

「狩猟者が獲物を仕留めるように、目標を達成するため、あらゆる方法を考え、積極的に試そうとする意識と行動力を備えた存在です。みずから考え、率先して行動するという意味では、『自律的プロジェクトマネジャー』と呼んでもいいでしょう」(伊藤氏)