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メイヨークリニックの「エビデンス・マネジメント」
病院が好きな人はいない。病院に行くだけで不安を感じざるをえず、恐いという気持ちを抱くこともしばしばである。また多くの人にすれば、病院は死を象徴するものだろう。
そのうえ、一般の患者が直接的な証拠に基づいて、医療という「製品」の質を判断するのは非常に難しい。しかも、まず試してみて気に入らなければ返品するというわけにはいかない。この製品はきわめて重要でありながら、専門知識がなければ理解できない。
そこで、医師や医療施設が信頼できるかどうか判断するために、ほとんどの人は無意識に「探偵」となって、医師の能力や介護の質、信頼性の証拠を探し、実際に目に見え、自ら理解できる証拠に基づいて、目に見えず、理解できないものの質を何とか推し量ろうとする。
メイヨークリニックは、患者やその家族が目にする証拠を成りゆき任せにしたりはしない。目に見える、あるいは実体験による「手がかり」を注意深くマネジメントすることにより、「常に患者第一」という、説得力のある一貫したメッセージを発信している。
職員の採用や訓練にまつわる方針から、施設の設計、医療へのアプローチに至るまで、メイヨークリニックは、その能力と価値観について、患者とその家族に具体的で説得力あふれる証拠を提示している。
この証拠はクチコミによって、非常に高い評判と揺るぎない顧客ロイヤルティを実現している。概して医療業界の場合、宣伝はほとんどなされないため、ブランド認知は地元内に限られるのが一般的であるが、メイヨークリニックは業界随一とも称されるブランドを築くことに成功している。
このようなアプローチは、「エビデンス・マネジメント」と呼ばれる。自分の能力を具体的に表明する、首尾一貫した、偽りのない、ありのままのエビデンス(証拠)を顧客に提示するという体系的なアプローチである。エビデンス・マネジメントは広告によく似ているが、組織そのものが「生きた広告」になるという点で、広告宣伝とは異なる。
もちろん、エビデンス・マネジメントに優れた組織はメイヨークリニックに限らない。