サービスのR&Dは体系的に実施されていない

 今日のビジネスの中核には、一つのジレンマが存在する。我々の経済活動がますますサービスに依存しつつあるにもかかわらず、イノベーションのプロセスは製品開発志向のままであるというものだ。

 製品を開発し、改善するための科学的手法はすでに十分検証されている。それはトーマス・エジソンの実験室までさかのぼる。しかし、その多くがサービスの分野では生かされていない。

 サービスにイノベーションを起こそうという企業は、ブレーンストーミングや試行錯誤、イノベーション・チームといった、体系化されず、偶然任せの試みに陥りがちである。

 時には成功することもある。しかし長い目で見れば、サービス開発、そしてイノベーション全般で必要とされる、一貫性や生産性を向上させる体系的な学習の機会を与えられていない。

 とはいえ、体系化されたR&Dの実験プロセスをサービスの開発に適用しようとする際に生じる問題は、察するに難くない。

 まず、サービスは無形であり、多くの場合、顧客に提供される瞬間のみ存在するため、従来型の実験室に持ち込むことが難しいという点が挙げられる。また、多くのサービスが、購入時点で個々の購入者に合わせてカスタマイズされるため、サンプルを多数集めて検証することもままならない。

 結果的に、新しいサービスの実験は、現場で実施されて、初めて意味を帯びてくる。すなわち、実際の顧客が現実に取引する時に実験されるのだ。

 ただし、このように現場で実験するということは、失敗に伴うコストを上昇させることになる。顧客との関係のみならず、ブランドさえも傷つけることになりかねない。