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顧客の獲得と維持は収益性のみならずリスクも考慮すべき
あなたが金融サービス会社のマーケティング担当役員で、新規顧客の獲得とその維持のために500万ドルの予算を抱えているとしよう。ではその際、あなたは獲得すべき新規顧客、また維持すべき既存顧客をどのように決定するのか。
最も収益性の高い顧客を突き止めるために、まずその顧客の売上履歴、そして獲得と維持に要する費用を検討する。しかし、ここで分析を止めてはいけない。
この顧客のロイヤルティが高ければ、当面の間は、言うまでもなく望ましい。既存顧客のリピート・オーダーにはマーケティング面での努力が少なくて済む。実際、新規顧客のそれと比べて90%もコストを節約できるという統計もある。
したがって、相当先のキャッシュフローまで予測して、獲得または維持する顧客を決定しなければならない。ただし、マーケティングの予測に過去の実績が役立つことは認められている一方、選択を誤らせる危険性も認識されている。
購買の規模や頻度が常に一定ではない顧客もいる。これは利率などの外的要因に応じて支出できる現金が変動したり、競合他社の低価格品を購買したりすることが原因だろう。それゆえ、選択肢はある程度ははっきりしている。安定した大口顧客を維持し、不安定な小口顧客を減らす。
では、不安定な大口顧客や安定した小口顧客はどうするのか。これらの顧客の獲得および維持の是非について、またそのために投じるべきコストは不明瞭な場合が多い。そこで、株式投資家の運用法を手がかりに、このような予測できない顧客行動の問題に対処し始めた企業が現れている。
株式は価格変動が予測できない。一般的に投資家は、どれほど分析に自信があろうと、履歴や見通しの異なる数十種類の株式でポートフォリオを構成する。それぞれが許容できる不確実性レベルの範囲内で希望する収益を生み出すように構成されるため、そのポートフォリオは多種多様である。
キャッシュフローの根源として、顧客もまた資産と考えられる。それも不確実な資産である。株式と同様、顧客を獲得・維持するコストは、今後予想されるキャッシュフローの価値を反映したものでなければならない。