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短い休憩がもたらす大きな効果
サバティカル休暇が人生を変える機会となることがある。世界を探検したり、家族との絆を確かめたり、長年の夢だった計画を実行に移したりするチャンスを与えてくれる。しかし多くの人にとって、こうした長期休暇の取得は、雇用者側の方針や経済事情により、実現が極めて難しい。そのような場合には、短時間の休憩を戦略的に活用することが役に立つ。長期のサバティカル休暇は人生を劇的に変える可能性が期待されるのに対して、短い休憩もまた、集中力と活力を高め、ひいてはパフォーマンスを向上させるという大きな効果をもたらしうる。
本稿では、慢性的な働きすぎによる隠れたコストを説明したうえで、効果的な休憩を取るための時間のつくり方、そして回復に協力的な文化の形成にリーダーが果たす極めて重要な役割について考察する。いまこそ私たちは、競争の激しいこの社会で成功するために、いかなる長さであれ休憩というものを受け入れ、正当に評価すべき時期に来ている。
なぜ休憩が必要か
人間の体と脳は、休憩を取らずに絶え間なく働けるようにはできていない。高性能のシステムはすべてそうであるように、私たちも最高の状態を維持するため、充電や再調整、定期的な休止期間を必要とする。
生理学的に見ても、疲労を予防し軽減するために休憩は不可欠だ。脳の活動のエネルギー源となるグルコース(ブドウ糖)は、負荷の大きな認知活動の際に使われるが、休憩を取ることで回復する。休憩はまた、コルチゾールの分泌調整などによりストレス反応システムを沈静化するため、交感神経系の活動(闘争・逃走反応)の抑制に役立つ。これは目先のストレスを緩和するだけでなく、心血管系および免疫系の機能障害を引き起こす慢性的なストレスも防いでくれる。さらに、休憩はデフォルト・モード・ネットワークと呼ばれる脳の特殊な回路(脳が安静状態の時に活動する神経回路)の働きを促し、これが内省や創造的な発想、情報の統合に結びつく。
また心理学的に、休憩は、生産性を阻害する一般的な要因に対処する手段にもなる。終わっていない個人的なタスクを抱える精神的負担は、就業時間中に私たちの気を散らす要因となり、無視していると緊急事態に発展することがある。これらの責任への対処として、休憩は精神の乱れを整え、危機を回避し、従業員が再び明晰な頭でみずからのタスクに取り組めるようにする。
動物保護施設の職員を対象とした研究結果[注1]を考察してみよう。この職業は、従業員に燃え尽きるほどの自己犠牲を強いることで悪名高く、年間の離職率は100%を超えることもある。10年間もこの仕事を続け、組織や政府機関のリーダー役にまで上り詰められたのは、「休憩を取ることは弱さではなく、強さである」と語った人たちだけだった。
休憩によって、従業員はリセットし、ストレスを軽減できるため、視野の広さや集中力を取り戻し、結果としてチームや組織にもメリットをもたらす。休憩中の職場での自然なふれあいは、人とのつながりを強め、コミュニティを育む。そして、信頼と心理的安全性を構築し、集団全体のコラボレーション、士気、レジリエンス、順応性、エンゲージメント、意欲、イノベーションを向上させる。