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逆境を乗り越えて得た最高の人生経験
ベサニーは30代前半で岐路に立っていた。彼女はワシントンDCで米国政府機関に勤めたのち、オーストラリアのロースクールから博士課程の入学許可を得ていた。それはパートナーのそばにいるための選択だったが、入学直前に突然、その関係が終わりを告げた。足元で床が崩れたかのような感覚だった。しかも、その年は彼女にとってつらい年だった。父親が数カ月前に亡くなったのだ。
打ちのめされて途方に暮れた彼女は「人生の喜びを噛みしめる力を失ってしまったのではないか」と不安になった。しかし、他の博士課程に応募することも新しい仕事を探すこともしなかった。その代わり、非常に優秀な達成志向(ハイアチーバー)にしては大胆な行動に出た。1年間お金を貯めると、6カ月間のサバティカル休暇を自分に許可したのだ。
この間、ベサニーは中南米でボランティア活動やトレッキングをし、友人を訪ね、約500マイル(約800キロメートル)に及ぶスペインの歴史的な巡礼路「カミーノ・デ・サンティアゴ」を踏破した。そして、何かに夢中になる気持ちと活力を取り戻した。
「新しいことに挑戦する自信が高まったことで、プロフェッショナルとして自分に何ができるかに目覚めました」と彼女は話してくれた。「私は常々、人生で一番に目指すべきは段取りを整えて、完璧に計画通りに進めることだと思っていました。でもいまは、さまざまな生き方があり、どのような形であれ、自分の好きなように生きればいいのだと気づきました」
そして彼女は、ロースクール時代から情熱を感じていた分野に特化した法律事務所に入所した。カリフォルニア州の部族法およびアメリカンインディアン法を専門とする事務所である。
ベサニーが経験した視点の変化は、サバティカルを取った人に共通している。筆者は学術界の協力者とともに研究を行い、長期にわたって仕事から離れた経験を持つ250人以上を対象にインタビューを実施した。また、筆者自身もサバティカルを取得した。こうした経験から、サバティカルには必ずと言っていいほど人生を変える力があることを明らかにした。
サバティカルを経験すると、自分が生まれ変わったかのように感じ、優先順位が明確になり、世界における自分の役割に対する認識が向上する。自信や創造性が高まり、心身の健康状態も改善する。場合によっては、キャリアの新しい目標を胸に刻み、そこに向かって進む勇気を手に入れて、新しい道を切り開く人もいる。
しかし、それと同じくらい多いのは、新たな視点を得て優先順位を微調整し、従来と同じか似たような道をたどるケースだ。具体的な結果はどうあれ、サバティカルの経験者は一様に「最高の人生経験」と評している。その重要性は、子どもの誕生や結婚など、人生を左右するイベントに匹敵するという。