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変革の報酬
仕事であれ業界であれ、気に食わないところがあるのに、なぜか引き寄せられてしまうことがある。
患者を治すためならば何でもやりたいと望む医者は、管理医療が押しつける効率性と戦わなければならない。自動車のデザイナーは自分が設計する車のスピードと美しさに夢中になるが、排気ガスが環境に及ぼす影響に思いをめぐらし苦労する。多国籍企業のマーケティング部長は自分の仕事をこよなく愛しているが、文化の違いに鈍感な会社の態度に頭を抱える。
しかし、現状に愚痴をこぼす人は多いが、何らかの行動に訴える人はそうそういない。要するに、自らを危険にさらすと、職を失うやもしれないからである。
己の信じる価値観と仕事のいずれを取るか選択を迫られた場合、大半の人は諦め現状を甘受するか、あるいは会社を去っていく。
スタンフォード大学教授のデブラ E. マイヤーソンは、ここに第3の道があるとして、自著Tempered Radicalsで論じている。内部から一歩一歩変えていくことを厭わなければ、一人でも大規模な変革を成し遂げられるというのだ。
彼が言うところの「筋金入りの過激派」は、自分の身の安全を確保しながら体制に揺さぶりをかける。また、彼らは草の根活動のリーダーとして陰で暗躍する。
大いなる変革者
マイヤーソンは、ロバート・レッドフォードこそ、その典型であるという。レッドフォードは過去20年余りにわたり、映画業界を変革せんと腐心してきた陰の立役者である。
1980年、映画『普通の人々』でアカデミー賞監督賞を受賞すると、すぐに彼はユタ州の山中に芸術村「サンダンス・インスティチュート」(以下サンダンス)を設立する。