社内キーパーソンは4種類に分かれる

「問題は、あなたが『何』を知っているかではなく、『だれ』を知っているかである」。まったくそのとおりであり、だれもがうなずくところだろう。

 マネジャーたちは、たとえば、無茶な締め切りに間に合わせる、戦略上の意思決定についてアドバイスを仰ぐ、新しい上司に関する確度の高い情報を得るなど、自らの人脈を頼って必要な情報を集めている。

 このように情報を入手する場合、あるいは業務上の必要に迫られた場合、既存の階層組織のみならず、インフォーマルな社内人脈が大きな役割を果たす。また、社内人脈は社内政治のうえでも大きな力を発揮する。ほとんどのマネジャーが、その状況を見回したうえで、賛成しかねる企画であれば、その企画者の評判を貶めるために、あるいは賛同できる場合には後押しするために、手持ちの人脈を利用する。

 しかしほとんどの大企業で、社内人脈というインフォーマル・ネットワークを「見えない敵」かのようにいぶかるきらいがある。つまり、意思決定を遅らせるばかりか、実施に支障を来たす原因と見ているのである。

 経営陣にすれば、この種の複雑なコミュニケーション・ネットワークは把握し難いばかりか、コントロールしにくい類のものであり、その目には「とうてい科学的な経営手法と相容れない」と映っている。その結果、インフォーマル・ネットワークを何とか迂回しようとするか、最悪無視することがある。仮にこのネットワークの存在を認めたにしても、社内人脈という立派なソーシャル・キャピタル(人間関係という見えざる資産)を育む際、自らの直感──あまり当てにはならないが──だけで何とか対処しようとする。

 社内人脈はそのように取り扱うべきではない。それにインフォーマル・ネットワークは体系的に構築できる。事実、我々の研究では、シニア・マネジャーが人脈内のキーパーソンに注目するだけで、インフォーマル・ネットワークの有効性が高まることが判明している。

 5年間を費やして50数社のインフォーマル・ネットワークを分析した結果、そこには4種類の役割が存在し、組織の生産性に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。

(1)縁結び役

 インフォーマル・ネットワーク内の大多数の人々と直接つながりを持っている人である。部門の責任者であるケースは少ないが、ネットワーク内の全員が利用できる仕事上の情報や知識はだれに聞けばわかるのか、子細にわたって掌握している。