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AI活用がもたらす中小企業の競争優位
2022年、エニスフィアのチームがAIコーディング支援ツール「カーソル」を立ち上げた時、彼らは潤沢な資金を持つ巨大企業ではなかった。より賢いコーディングの方法を構築する、精鋭の少人数の開発者グループにすぎなかった。だが数カ月のうちに、オープンAIやギットハブのツールと競合し、小規模なチームでもAIの力を借りれば、自分たちよりはるかに大きな企業とも互角に戦えることを証明した。
こうした拡張可能で知的な設計は、もはや大企業やテクノロジー系スタートアップだけの独占領域ではない。エニスフィアや同類の企業はまだ事業の初期段階にあるが、意欲的な起業家がAIを活用すれば、意思決定が加速され、新市場を切り拓き、業務を効率化できることを実証している。
筆者らが実施したグローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)の最新調査(米国の起業家2300人以上を対象)によれば、成長志向の起業家、すなわち意欲的な起業家は、AIを自社のビジネスモデルと将来の成功に不可欠と見なす傾向が極めて強いことが明らかになった。本稿では、こうしたベンチャー企業を導く指針として、AIとともに成長するための実践的枠組みを提示したい。
意欲的な起業家の重要性
米国労働統計局によると、小規模企業は米国全体の99%に当たり、民間部門の雇用の約半分を占めている。また米国国勢調査局のデータでは、雇用創出において常に大企業を上回っている。だが、最も抜本的な変革を牽引しているのはそのうちの一握りのグループ、すなわち意欲的な起業家たちだ。前述のGEMの調査データによると、今後5年間で20人以上の新規雇用を見込んでいる米国の起業家はわずか18%にすぎない。
意欲的な起業家は次の点で際立っている。彼らは雇用を予定していない起業家に比べ、革新的な製品やサービスを導入する可能性が4倍以上高く、雇用創出とイノベーションの両方の原動力となっている。また、単なる成長を目指すのではなく、ディスラプション(破壊)をもたらし、規模を拡大し、リーダーとなることを志向している。その目標を達成するために、AIは不可欠であると考えているのだ。そして目標を達成すれば、経済再生に並外れた貢献をする。
起業家企業におけるAIの導入
大企業のリーダーは、AIが空前のスピードで業界を変革し、既存のワークフローを破壊し、ビジネスモデルを再定義しているという点について、広く認識を共有している。デロイトのグローバル調査では、経営幹部の78%が今後1年間でAIへの投資を増やす計画があると答えている。だがこれは、企業レベルのディスラプションに留まらない。生成AIツールは、かつては潤沢な予算を持つ大規模チームだけが享受していた機能を、誰でも手に入れられるものにしつつあるのだ。
利用できるAIアプリが急速に増えているにもかかわらず、中小企業のAI導入に対する認識については、十分な研究が存在しない。入手可能な数少ない調査の一つによれば、AIをすでに利用している、または今後2年間で利用する予定の中小企業は21%に留まっている。だがGEMのデータは、状況をより鮮明に示している。それは、意欲的な起業家(今後5年間で20人以上の新規雇用を計画する層)がAIを極めて重視しているという事実だ。






