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ロイヤルティ・リーダーの優位性
顧客や社員、サプライヤー、株主のロイヤルティが高ければ高いほど、その企業が得る利益も大きくなる。これは、今日ではほぼ周知の事実であろう。それでは、このような関係者すべてのロイヤルティを獲得し、また維持するためには、企業はどのような戦略を立てればよいのか。
筆者は10年以上もこのテーマに関して研究を続けてきた。最新の研究成果から出された結論は、多忙をきわめているマネジャーたちにとっては、思わず耳をふさぎたくなるようなものである。
「ロイヤルティ・リーダー」、つまりロイヤルティという面で最も印象に残る企業を調査してみたところ、一つの確信に至った。
ロイヤルティを生み出すという課題は、一つのタスクフォース(特命委員会)や聡明で前途有望な若手社員に任せておけるような問題ではない。ソフトウエアの更新や新たな無線技術戦略で解決できる問題でもない。単なる顧客データベースの改善や業績評価や報奨制度の問題でもない。傑出したロイヤルティとは、トップがいかに誠実さを持って言動し、決断し、そして実践してきたかによって得られるものなのである。
筆者が調査した企業は、人材やテクノロジー、戦略面では他社と比較して、それほど大きな差はない。ただ一つ明らかに違う点があるとすれば、トップの考え方だった。
ロイヤルティ・リーダーと呼ばれる企業は、ノースウエスタン・ミューチュアルやバンガードから、チック・フィルAやエンタープライズ・レンタカー、ハーレーダビッドソン、インテュイットに至るまで、多種多様である。
これらの企業の間に何か共通点を見つけようというのは、一見無理な話に思えるかもしれない。しかし、表面的には異なるように見えても、リレーションシップ戦略においては驚くほど類似している面があるのだ。
この戦略は6つの単純な原則に基づいている(囲み「ロイヤルティ・リーダーのための6原則」を参照)。これは、トップから発せられ、全社員にその企業の内外におけるリレーションシップのあり方を告げるものである。
ロイヤルティ・リーダーのための6原則
高いロイヤルティを誇る企業は非常に多様な産業にわたって存在するが、いくつかの点で共通の要素を持っている。すなわち、ロイヤルティの実現と維持に力を注ぐ昔ながらのトップと、以下6つの原理に基づいた戦略である。
1. トップは実践目標を公言せよ
正しい価値観を持つだけでは十分ではない。それを明確に表現し、自分の言動で、顧客、社員、サプライヤー、株主に周知徹底しなければならない。
2. Win-Win関係を構築せよ
ロイヤルティを構築したければ、競合他社を負かすだけでなく、ステークホルダーと共に勝利しなければならない。
3. 強い選別意識を持て
高いロイヤルティを誇る企業においては、そこに参加しているだけで名誉になる。ロイヤルティなのか、単につき合いが長いだけなのか、その違いを明確にしておく必要がある。
4. シンプル・イズ・ベスト
この複雑な世界においては、小規模なチームによって任務と責任を明確にすることが求められている。また、意思決定の参考となるシンプルな原則が必要とされている。
5. 正しく評価し、正しく報いよ
最も有利な条件は、最もロイヤルティの高い顧客に与えるようにしよう。最も有益なチャンスは、最もロイヤルティの高い社員やパートナーに与えるべきだ。
6. 熱心に聞き、率直に話せ
コールセンターやインターネット上のチャットルームなど、顧客がフィードバックを与えてくれるところならどこでも訪れてみよう。社員が率直な批判を安心して口にできるようにしておく。「ロイヤルティ測定テスト」を活用しよう。自分が学んだことを説明し、どのような行動を取っていくのかをきちんと伝えよう。
ロイヤルティ・リーダー企業の仲間入りを望んでいるマネジャーにとっては、これらの戦略が出発点となる。以下、模範的な企業のトップが6つの原則をいかに実践しているかを説明していきたい。
ロイヤルティを高める6つの原則
PRINCIPLE 1|トップは実践目標を公言せよ
多くのトップは、自らの最も大切な価値観を周囲に訴えかけることに、漠然とした抵抗を感じている。「言葉より行動が物を言う」というのが、一般的な彼らの信念なのだ。