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自社にとっての「勝利」とは何か
ある有名なS&P500企業で、長い戦略会議が終わろうかという時、上級幹部の一人が簡潔でありながら深遠な問いを投げかけた。「我が社は勝っているのだろうか」
これをきっかけに白熱した議論が始まった。同社は2年近くにわたって素晴らしい業績を挙げており、自社の計画と証券アナリストの予想の双方を上回っていた。その結果、幹部の大半は十分な額のボーナスを受け取ることができていた。
その一方で、同社の直近5年間の株価上昇率はS&P500平均を下回っており、将来の業績に対する投資家の信頼が平均以下であることを示していた。
従業員は疲弊していた。イノベーションは停滞し、次世代製品の発売日は繰り返し延期されていた。部門間のコラボレーションも見られなかった。一部のアナリストは、同社全体の企業価値を、その事業部門の価値を個別に合算した額よりも低く評価していた。
上級幹部らは同社の企業価値を高めようと決意し、そのために縦割りの組織を打破し、チームワークを強化して、相互にメリットのある目標に向けて全員が取り組むことを決めた。筆者らがこの原稿を書いている時点でも、同社はその努力を続けている。このプロセスにおいて、彼らは長年見て見ぬふりをしてきた根本的な問いに答えようとしている。それは、「自社にとって勝利とは何なのか」「進捗を測定し、管理するに当たり、適切な評価指標を用いているか」「どのような戦略的要因が成功を妨げているのか」という問いである。
本稿では、すべてのステークホルダーの利益のために企業価値を最大化することが、なぜ正しい目標であるのかを説明しよう。まず、7つの戦略要因を特定し、それらをどのように連携させ、企業全体としての強みを最大限引き出すかを検討する。そして、フィットネス・健康・ウェルネス関連の企業であるセルフエスティーム・ブランズ(SEB)の刺激的な例を参考に、とりわけ高い価値を創造する、とりわけ優れた組織を、いかにつくることができるかを示す。
戦略の現状
企業価値向上という大きな圧力を前に、多くのマネジャーは筆者らが「スプレッドシート(表計算)戦略」と呼ぶ手法に陥っている。彼らは、証券アナリストの期待を満たせる財務目標を設定し、その後、表計算ソフトの行や列を一つずつ埋めながら数字を微調整し、もっともらしく見える計画をつくり出す。そして最後に、それを実現する方法を後づけするのである。このアプローチには4つの欠陥がある。
1つ目は、古めかしい会計ルールを、現代の企業の価値を測定する最良の方法であると過度に信頼してしまうことだ。産業化時代に合わせて設計された会計ルールは、デジタル技術と強大な無形資産の時代には以前ほど意味を持たない。