自身のコアバリューを持つリーダーは、優れた意思決定を行う
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サマリー:経営環境が不透明さを増し、リーダーが直面する決断はますます複雑化している。こうした時代にこそ問われるのが、リーダー自身のコアバリューだ。みずからの価値観を明確に定義し、それを基盤に意思決定を行うリーダ... もっと見るーは、短期的な成果や表面的な戦略に頼るよりも、はるかに持続的で信頼に基づく成果を生み出すことができる。本稿では、リーダーが自身のコアバリューを見つけ、判断と行動の軸として活用するための6つの問いを紹介する。 閉じる

コアバリューがリーダーの意思決定を導く

 現代のリーダーは、一段と複雑化する意思決定や道徳的なパズルに直面している。多くの場合、それらを導くための明確な羅針盤はない。多くは、経済の先行きが不透明な中、痛みを伴う経費削減策を検討する一方で、自社の事業とはまったく関係のない社会的または政治的問題についてコメントを求められる圧力にもさらされる。同時に、AIによる急激な混乱と、世界的な緊張の高まりにも対処している。

 明確なプレーブックが存在しない重大な状況において、リーダーは日常的に、大きなトレードオフを伴う難しい選択に直面することになる。このような場面では、個人的なコアバリューが、意思決定と実行を導く強力な指針となりうるが、その力は十分に活用されていない。

コアバリューとは何か

 コアバリューとは、あなたが大切にしている、譲ることのできない価値観だ。それはオーセンティック・リーダーシップの根幹である。この価値観は、企業のそれとは明確に異なる。リーダーにはそれぞれ、たとえいま明確に言語化できなくても、独自の価値観がある。

 コアバリューと聞くと、多くの人は「家族」「正直」「誠実」といった、一語で表す美徳を思い描く。だが、このように一つの単語で表現される価値観には、人生と仕事のさまざまな局面で意思決定を導くという最も重要な役割を果たすために必要な具体性が欠けている。たとえば、「家族」というよくあるコアバリューは、ビジネス上の意思決定を行うリーダーにはあまり役に立たない。

 だが、「家族」というコアバリューを明確にしている人は、家族や友人、同僚のためにどう振る舞うべきかについて、より普遍的な基本原理を持っている可能性がある。たとえば、家族に必要とされる時にはいつも寄り添うことを心がけ、夕食は必ず家族と一緒に取り、子どもの発表会や試合は必ず見に行くなど、「常にそこにいる」ことを重視する人もいれば、「信頼関係を築く」という価値観を持ち、パートナーや家族からの信頼を得ることを深く気にかける人もいるだろう。こうした短い、行動指向のフレーズは、人生のあらゆる領域で示すことができる具体的な行動を意味する。

 個人のコアバリューは、リーダーの行動や意思決定に深い影響を与え、チームや組織全体にも波及効果をもたらす。研究によると、コアバリューに根ざしたオーセンティック・リーダーシップは、パフォーマンス、信頼、そして意思決定の質を高める。

 価値観に根ざしたオーセンティックなリーダーシップは、従業員の優れたパフォーマンスや、従業員と組織の強い絆と強く関連している。人員削減に関する大きな決定を下す時や、組織内で重要なスピーチやメッセージを伝える時など、ストレスの高い状況でコアバリューを振り返ったリーダーは、神経内分泌および心理的ストレス反応が大幅に低減されていた。また、『MITスローンマネジメントレビュー』の記事によれば、自身の価値観に基づいて行動するリーダーは、よりよい意思決定を行うことを、2人の学者が明らかにしている。

 有効なコアバリューは、行動指向で、あなたに固有のものであり、人生のあらゆる領域に適用できる。また、リーダーシップにおける重要な意思決定の指針の一つとして機能する。