リーダー人材にふさわしい人間性や能力を見極める没入型面接の手法
Lisa Berg
サマリー:コーチを世界的ブランドに育てた元CEOルー・フランクフォートにとって、組織変革のカギは優秀なリーダーシップチームの組成にあった。しかし、一見自信に満ちた「有害な人材」を見抜くことは容易ではない。彼は数々の失敗を経て、候補者の真の姿を浮き彫りにする独自の採用手法を確立した。本稿では、彼が長年実践し、人間性や潜在能力を多角的に見極めるための「没入型面接」の具体的な3つのステップを紹介する。

元コーチ(現タペストリー​)CEOであるルー・フランクフォートは、新著Bag Man: The Story Behind the Improbable Rise of Coach(未訳)で、売上高600万ドルだった同社を、50億ドル規模のグローバルブランドへと成長させた背景にある物語と戦略について語っている。本稿では、同書から、彼がコーチでの35年にわたるキャリアで実践し、そして現在はベンヴォーリオ・グループのトップとして用いている、面接のアプローチに関する部分を抜粋・編集し、紹介する。

優秀なプロから成るリーダーシップチームをつくるために

 コーチの事業を変革すること、IPO(株式公開)を実施できる状態にすることという2つの目標を達成するためには、信頼性の高いリーダーシップチームが必要だった。それは、逆境下でブランドや企業を成長させたことがあるなど、多様な経験を持つベテランのプロフェッショナルから成る協働グループだ。私にはない知識を持っている特定領域の専門家で周りを固めたかった。

 上級職チームの選抜は、リーダーの最も重要な役割の一つだ。かつて、私は候補者を適切に選別することや、仕事の要件について十分に批判的に考えることができていない時期もあった。そのため、時には人選を誤り、選んだ人が職務を十分に遂行できなかったこともあった。そうした失敗で、私は自分を責めた。そして適任者の採用という重要なタスクで失敗する可能性を減らし、素晴らしい人材の採用に成功する可能性を高めようとして、面接のテクニックを磨き続けた。

 人物の全体像を把握するため、積極的な対話を試みた。具体的に言うと、私が雇いたいのは、2つの基本的な性質、すなわち価値観とケイパビリティが備わった人だった。もしその人が価値観の面で不適切だったなら、いくら有能でも成功できないだろう。同様に、いくら素晴らしい価値観を持っていても、仕事のスキルと意欲が欠けていれば、やはり成功は望めないだろう。その人を総合的に理解することによって、ある職務や将来の役割でプロフェッショナルとして成功する可能性を高められるのだ。

 私は自分で開発したこのテクニックを没入型面接と呼んでいる。コーチで用いたこのアプローチは、今日の没入型テクニックと本質的に通じるものがある。

没入型面接の3つのステップ

 仮にあなたがコーチのリーダーシップポジションに応募したとしよう。あなたは私と向き合う前に、あなたの技術的スキルや専門能力を調査した多くのスタッフと会ったはずだ。私は直属の部下や特別に選抜するスタッフについては、採用プロセスの最初と最後に候補者を面接した。どちらの面接も、有能なチームを形成する能力や意思決定の下し方など、見えにくい能力を把握するためだった。

 面接は通常、3つの段階に分かれる。最初はリラックスした雰囲気で話を始め、経歴や直近の仕事の経験について質問する。これは、あなたの経歴のやや個人的な部分についての質問だ。履歴書やその他の経歴に関する資料にはすでに目を通している。ここでは、あなたが育った場所や人生を変えた出来事、つまり人生を形成した出来事について、少しばかり知りたい。家族の話も聞きたい。直近の仕事で何に一番満足し、何に不満を感じていたか。何に関心があり、どのような趣味を持っているか。最も誇れる功績は何か。あなたの人生行路を理解するために、プロフェッショナルとしてだけではなく人間としてのあなたに注目して話を聞く。そして印象的なことや重要なポイントをメモして、後でその話題に戻れるようにしておく。15分か20分ほど経ったら、次の段階に移る。

 面接の第2段階では、現在または直近の上司など、あなたを最もよく知っている人の名前を尋ねる。次に、その上司のEQ(心の知能指数)を1(低)から10(高)の10段階で、あなたに評価してもらう。評価は7か8か9であることが多いが、それよりも低かったら、どの観点からそう評価したのかを理解するために、さらに詳しく話してもらう。