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人員が増えても、リーダーが仕事の仕方を変えなければ成果は出ない
あなたは数カ月の間、複数の上級職のポストをカバーし、長期にわたる採用面接にも関わって、ついにすべての欠員が埋まった。これでようやく通常の業務、つまり本来の仕事に戻れそうだ。
この時点で、あなたには急にまとまった空き時間ができたかもしれない。優先すべきことに集中して、仕事を引き継ぎ、ワークライフバランスを整える機会になるだろう。しかし、自分の状況を意識して見直さなければ、これまでのスケジュールや働き方に流されて、本来得られる柔軟性をあっさり失いかねない。気がつけば相変わらず会議をはしごして、個々のプロジェクトに深入りし、本来は他の人が対応すべきメールに返信しているかもしれない。人員が増えたにもかかわらず、あなたは以前と同じようにすべての仕事を抱え込んでいるだろう。
筆者は時間管理コーチとして、新しいメンバーが加わった時にシニアリーダーがコントロールを手放せずに苦労する姿を見てきた。従来のやり方を続けるほうが短期的には簡単に思えるが、長期的には、自分にとってもチームにとっても損失となる。自分の役割と優先事項に集中しなければ、リーダーとしての潜在能力を十分に発揮することはできない。それがチームの成果を制限し(さらに新しいメンバーをいら立たせ)、あなた自身の成長の機会を妨げ、必要なセルフケアに投資できなくなる。
新しい人材がもたらす時間的な恩恵を最大限に享受するには、これまでのやり方を根本から見直す必要がある。そして、もはや自分の仕事ではないことを見極めて手放すのだ。
本稿では、切実に求めていた人材とリソースをようやく手に入れたにもかかわらず、まだスケジュールに余裕がないと感じる場合に、時間を取り戻すための手順を紹介しよう。
不要な会議からできるだけ早く外れる
ジルが率いるグループは、全社の収益目標を達成するために月次の成長率を大幅に引き上げることを求められていた。しかし、肝心な時に営業担当のバイスプレジデント(VP)が退職した。ジルは実質的にその上級職を兼務することになり、毎朝のエクササイズを諦めて、仕事をする時間を捻出した。
営業の現場に直接関わるようになれば、新しいVPが着任した後も、離れたくなくなるだろうとジルは自覚していた。自分が意思決定を行い、チームと信頼関係を築き、結果を出していたのだ。しかし同時に、自分が手放さなければ、営業担当VPのポストが名目上は埋まっても、実質的な仕事は自分がやるという状態が続くことも理解していた。そして、彼女は心から、スケジュールに余裕をつくって落ち着ける時間がほしかった。
筆者はジルに、スケジュールに組み込まれている会議について、新しいVPが加わったいまも本当に自分が参加する必要があるのか、見直すように助言した。チームミーティング、スタンドアップミーティング、プロジェクト会議、1on1ミーティングなど、あらゆる会議だ。
新しいリーダーを紹介して引き継ぎの第一段階を終えた後、ジルは毎週月曜日の朝のチームミーティングを除いて、営業関連の会議のほぼすべてから外れると決めた。新しいVPが役割を果たし、重要な進捗や決定事項について報告してくれると信頼することにしたのだ。
こうしてジルのスケジュールに大きな余裕が生まれ、新しいVPが責任者として機能する体制が整った。
自分がやる必要がなくなった仕事を人に任せる
ジムも、ジルと同じように、極めて困難な時期を経験していた。上場企業で働くジムは、CEOに報告が上がる戦略案件のアップデートに対応しながら、複数の重要なイニシアティブでプロジェクトマネジャー(PM)が空席になっていたため、そのマネジメントも担当していた。圧倒的な業務量だった。
ようやく新しいPMを確保したジムは、できるだけ早く仕事を任せて、自分は戦略的なレベルでチームに貢献すべきだと考えた。以前のように自分の時間をコントロールできるようになれば、朝は運動をして、夜は子どもたちと過ごすなど、自宅でゆっくり時間を持てるだろう。
そこで、会議のスケジュールを精査して出席する必要がないものを外し、自分が抱えているプロジェクトとタスクリストを洗い出して、手放せるものを選別した。継続中のタスク、チームのフォローアップ、上層部向けの資料作成といった特別な案件も含めて、今後は自分が担当しないタスクと、新たに着手しないプロジェクトのリストを作成し、新しいPMたちに引き継いでいった。
この過程で、チームの成果が自分の基準に達しないことに失望や不快感を覚えることもあった。しかし、ジムは再び自分がコントロールしようとするのではなく、立ち止まって、よりよい仕組みを整える好機と考えた。
たとえば、自分がレビューをする時間をつくるために期限を前倒しして、資料などが広く共有される前に修正できるようにした。また、外部向けのプレゼンテーションの前に、必ずチームで内部レビューを行うことにした。こうしたプロセスによって、ジムが実際に手を出さなくても、質の高い成果が得られるようになった。
時間を戦略的に使う
ゲイリーはフォーチュン100で注目されているリーダーの一人だ。新しいメンバーに仕事を引き継いだ後は、自分は部門全体を推進する戦略的な役割に集中すべきだと、頭では理解していた。しかし、時間管理のコーチングを通じて、そのような時間の使い方に自分が感情的な抵抗を覚えることに気づいた。
ゲイリーには、より多くの会議に出席するほど重要人物になるという無意識の思い込みがあった。スケジュールに余裕が生まれると不安が募る。何かを見逃しているのではないか、自分がいないところで存在感が低下したと思われているのではないか。その結果、新しく生まれた時間の使い方を意識して考えないまま、雑談やメールの対応を始め、忙しくてたまらないという気分を味わっていた。
時間管理のコーチングでは、こうした不安と向き合い、最も戦略的な仕事に集中する方法を整理した。たとえば、自分の部門の主なKPI(重要業績評価指標)を見直し、それらを達成するために自分が最も貢献できる行動を考えた。そして、自分が影響を与えられる領域は主に2つあることがわかった。すなわち、チームにとって最も重要なことについて明確な方向性を示すという個人の仕事と、ステークホルダーのマネジメントによって合意を形成することだ。
自分が達成すべきことを明確に理解したゲイリーは、週単位のスケジュールで、それらの活動の時間を確保することを習慣にした。会議の合い間、細切れの時間しかない時は、軽めのタスクや同僚との情報交換に充ててかまわない。しかし、1時間以上のまとまった時間を取れる場合は、部門の目標に直結する取り組みに集中するようにした。
自分をいたわる
サンディは、もはやリラックスの仕方さえ忘れていた。目が覚めた瞬間にベッドでメールを確認し、眠りに落ちる直前まで人事の複雑な問題を考えることが習慣になっていた。複数の上級職の穴を1年近くカバーしてきたが、ようやくすべての役職が埋まった。それなのに仕事から完全に離れることを考えただけで、体が拒否反応を示した。
ある夜、夫は友人と出かけ、サンディにはどうしてもやらなければならない仕事は何もなかった。その時、彼女はまず思った──先回りしてメールを確認しておこう。誰も勤務時間外の返信を待ってなどいない。彼女自身に、少しでも時間があれば仕事をするというパターンが染みついていただけだ。
しかし、サンディは時間管理のコーチングを思い出して踏み留まった。やるべき仕事がなくなることはない。意識して仕事から離れなければ、いつまでもリラックスできない。いまこの時にペースを落とさなければ、自分は燃え尽きるだけだ、とわかっていた。
彼女はコーチングでつくった「小さな楽しみ」リストを取り出した。散歩に出かける、親友に電話をする、テレビを見る、入浴する──。その日は明るいうちに帰宅していたので(欠員の埋め合わせをしていた時期は、ほぼ不可能だった)、近所を散歩することにした。「念のために」仕事用のスマートフォンを持っていきたいところだったが、我慢して家を出た。
散歩をしながら、空の青さや、近所の庭で咲き始めた花、セミの声に気づいた。オフィスでPCに縛られていた時は、知る機会もなかったことばかりだ。肩の力が抜けて、緊張がほぐれ、思い出せないくらい久しぶりに心が安らぐのを感じた。仕事漬けの習慣を断ち切るには意識的な努力が必要だったが、本当に手放すことができた時の気分は格別だった。
* * *
欠員をカバーする期間は非常につらい。リーダーとしての役割が、通常の業務を超えて重く感じられる時はなおさらだ。欠員が埋まった後も、やるべき仕事は山のように残っている。しかし、コントロールを手放して、意図的に自分の時間を取り戻せば、本来の役割で最も重要なことに集中できるようになる。
"How to Let Go When a New Hire Takes on Your Old Responsibilities," HBR.org, October 28, 2025.






