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どの組織においても、不祥事や事故が起こる根本には、組織文化の深層部分にあるゆがみが大きく影響していると考えられる。では、どうすれば、組織文化のゆがみを矯正し、不祥事や事故の起こりにくい組織へと変革できるのだろうか。2011年3月、福島第一原子力発電所事故を起こした東京電力では、二度とこのような過ちを犯さないため、再発防止対策として、安全最優先の組織文化への変革に全社員で取り組んできたという。本稿では、東京電力ホールディングスで安全啓発・創造センター所長を務め、全社員への啓発活動を行ってきた筆者が、同社で行った意識変容と行動変容のための具体的な取り組みを紹介する。
>前回の記事「世界最悪の福島第一原発事故を招いた「失敗の本質」は何か」はこちら
東京電力が行った全社員への啓発活動
前回は、福島第一原子力発電所における事故の根本原因であった東京電力の組織文化の深層にあるゆがみとともに、これが事故や不祥事に悩む他組織にも共通する構図であることを解説した。
もし、目に見えない組織文化に問題を感じた場合、読者の皆さんは、どうするだろうか。トップダウンの施策を待つか、ボトムアップの突き上げに期待するか。それとも、「組織とは、しょせんこんなもの」と現状を甘受し、「どうせ変わりっこない」と諦めるだろうか。
今回は、事故・不祥事の再発防止対策として、さらに人と組織の成長を促すうえでも不可欠な、一人ひとりの「自律性」を引き出す方策を、東京電力の全社員への啓発を通じて、試行錯誤しながら実践した手応えも含め、具体的に解説する。
最初に、再発防止には根本原因分析が必要
再発防止を行うに当たっては、事故や不祥事の根本原因を分析することから始める必要がある。これを理解することで、社員に対して、どのような啓発活動や対策を行えばよいのかが、明らかになるからだ。
事故や不祥事の大半は、決められたルールからの逸脱によって起こる。では、なぜ人は決められたルールを守れないのだろうか。ルール逸脱には、「できない」「知らない」といった無意識の逸脱と、意図的な逸脱の2種類がある。
後者には、確信的に他者を害する意図による「違反」のほか、これくらいならよいだろうなどの正当化理由を立て、「ルールを知りながら、あえて逸脱するもの」がある。この最後のものが、事故や不正の大部分を占める。
同じように、「まさか事故は起きないだろう」と、正当化理由をこじつけて慢心する、ゆがんだ無意識の思考パターンのメカニズムを、前回の記事で説明した。
このように問題の原因が組織文化に根差す場合、目に見える表層の現象にもぐら叩きのように事後的に対処しても根本的解決にはならず、再発が容易に想像できる。
実際、事故や不祥事がルール逸脱によるものだからといっても、ルールや倫理に関する再教育が効果的ではないケースは少なくない。






