新商品の成否を分けるカギは「店長」にある
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サマリー:企業の新商品導入には従来の4P(product、price、place、promotion)に加え、第5のPである「人」(People)が重要だ。ハーバード・ビジネス・スクール助教授の天野友道とホルヘ・タマヨは、現場を担う店長の資質が商品の成否を左右すると指摘する。本稿では、店長の能力が売上改善や在庫管理の適正化、導入店舗の拡大にどう貢献するのか、南米コロンビアの小売業者の調査結果に基づき詳述する。

店長の能力を軽視してはいけない

 本稿はハーバード・ビジネス・スクールのワーキング・ナレッジによって作成されており、助教授の天野友道、ホルヘ・タマヨの知見を紹介している。

 企業は新商品の発売について評価する時、伝統的に4つのPを考慮する。商品(product)、価格(price)、場所(place)、そして販促(promotion)だ。しかし、ひょっとすると5つ目の「P」を加えるべきなのかもしれない。人(people)だ。

 新商品の成否は、その展開を実際に監督する店長の資質で決まることが多いと、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)助教授の天野友道とホルヘ・タマヨは言う。

「イノベーションを生み出すことに多くの労力をかけても、その価値は、消費者に実際に届いた時、初めて実現する。小売店の棚は、それが起こる重要な場所の一つであり、だからこそどのように展開するかが極めて重要になる」と天野は語る。「マーケティングではシステムが注目されがちだが、店舗での出来事について、人間が大きな役割を果たす事実は見落とされがちだ」

 経済の不透明感が個人消費の足を引っ張る中、多くの企業は商品発売による失敗を避けようと必死だ。天野とタマヨは、自分たちの研究結果を受け、企業が店長の質に注目することにより、商品発売の成功率を高めることを期待する。

「最近は素晴らしい情報システムが多いが、中間管理職が果たす役割は依然として大きい」とタマヨは言う。「最悪なのは、それに気がつかないことだ」

 天野とタマヨは2025年2月に「小売店における新商品の展開:店長の能力が導入に与える影響(“New Product Diffusion Within Retailers: The Effect of Managerial Quality on Rollout”)と題されたワーキングペーパーを発表した(同年5月に加筆)。

優秀な店長が着任すると起こること

 個々の店舗と商品の売れ行きを調べるため、天野とタマヨは200店舗以上を持つ南米コロンビアの大手小売業者を対象に選んだ。この会社で2017~2019年に発売された16カテゴリーの新商品(ビール、ポテトチップ、ヨーグルトなど)についてデータを追跡した。その結果、優秀な店長が着任すると、その店や商品の売上げが改善することがわかった。

「ある店舗の売上げに影響を与える要因は、ロケーションから天候など多岐にわたる」と、タマヨは言う。「ある店長が着任して売上げがアップしたなら、それは優秀な店長だということだ」

 新商品がヒットするかどうかは予測がつかないことが多いため、大型チェーンは通常、いきなり全店に新商品を導入することはない。一握りの店舗で販売してみて、売れ行きがよければ、取扱店を増やしていく。

「ある商品を新たな店舗にも導入するかどうかの決め手になる変数は、売れ行きだ」とタマヨは言う。「優秀な店長がいれば、取扱店舗数が増える可能性は高まるのかと、私たちは考えた。その答えはイエスだった」