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自分自身やチームの限界点を見極めよ
そのプロジェクトは、書面上ではすべての面で問題がないように見えた。期限は遵守され、作業は順調に進み、会議は効率的に行われた。だがその裏で、プロジェクトを担当した成績優秀なマネジャーは、こう打ち明けた。「うわべでは何とか平静を保っていましたが、心の中では泣き叫びたい気分でした。眠ることも、集中することもできず、ちょっとしたタスクでさえ不可能に思えました。もう、いっぱいいっぱいだったのです」
この状態は、一見すると、プレッシャー下の従業員にありがちなストレスとして片付けられたり、バーンアウト(燃え尽き症候群)と間違えられたりしやすい。だが、どちらも違う。ストレスは刺激になることもあり、適切に管理すれば、集中力やエネルギーを高めてくれる。バーンアウトは、慢性的なストレスが管理されないまま長期にわたり蓄積された結果として起こるものだ。
キャパオーバーとは、心身を消耗させる、そしてしばしば目に見えない転換点であり、直面したストレス要因が自分の対処能力を超え始めている状態を示している。キャパオーバー状態になると、以前は対処できると思えた簡単なタスクでも、突然、不可能に感じられるようになる。キャパオーバーはある日突然、予測できない形で襲いかかる。この不安定性が特に危険だ。無視していると心身が消耗し、やがてバーンアウトに至る。そして、これは大半のリーダーが考えているよりも、はるかによく起きることなのだ。
筆者らは、仕事でのキャパオーバー体験を解明するために、現役プロフェッショナル94人を対象に調査を行った。ナラティブの記述と調査結果から、彼らがこの体験をどう描写し、何が原因となり、思考・感情・人間関係・仕事の成果にどのような影響を与えるのかを明らかにした。およそ10人中9人が過去1カ月間に、押し潰されそうだと感じたことがあると言った。急にコントロールができなくなり、以前なら対処できていたタスクをやり遂げる自信と能力が低下していく転換点として捉えていた。
とりわけ有能な従業員は往々にして、押し潰されそうになっても、それを外に出さない。平静を装い、その裏で静かに距離を取って自分から関わろうとしなかったりする。パフォーマンスが低下し、人間関係が悪くなり、あるいは突然の退職やバーンアウトによって表面化した時には、すでに手遅れであることが多い。キャパオーバーを放置すると、生産性、信頼、ウェルビーイングが次々と蝕まれていく。有能な人々が黙したまま精神的安定を失う瞬間、つまり限界点を見極めることは、いまやリーダーにとって極めて重要なスキルである。
チームのキャパオーバーに気づく
キャパオーバーが平静さの陰に隠れているとすれば、どうすればそれに気づけるだろうか。手掛かりは分かりづらく、一見矛盾していることが多い。筆者らの研究に参加した現役プロフェッショナルは、キャパオーバーであるにも関わらず、それが見逃されやすくなるような、逆説的な経験を語った。特に、期待を裏切らないために表面上は落ち着きを保っている、勤勉な人によく見られた。






