リーダーが弱さや強さをさらけ出す最適なバランス
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サマリー:多くのリーダーは能力不足と見なされることを恐れ、自分についてさらけ出そうとはしない。しかし絶対的な自信を装う沈黙は、かえってリーダーシップの基盤である信頼を静かに蝕む。実は、思慮深く「弱さ」をさらけ出すことは、温かさと能力の評価を高め、他者からの信頼を強める強力な武器になるのだ。何を、いつ、どのように語るべきか、リスクを抑え「開示のジレンマ」を乗り越える実践的な枠組みを解説する。

弱さを隠すことがリーダーシップを阻害する

 リーダーは、一見すると単純なトレードオフに日々直面している。それは、自分についてどこまで明かすかというバランスについてである。個人的なことを詳しく打ち明ければ、信頼やつながりが生まれることもあるが、裏目に出ることもある。そのためリーダーは、自分が高い基準で評価される立場にあることを自覚して、慎重すぎるくらい慎重になりがちだ。不適切なことを口にして、能力不足だ、愚かだ、プロ意識に欠ける、などと見なされることを恐れている。

 筆者は20年近くにわたり、情報開示の意思決定──心を開くか、言葉を控えるか、厳しい事実を和らげて伝えるかという選択──を研究してきた。そこにはさまざまな状況や利害関係を越えて、一貫したパターンが見られる。すなわち、リーダーは総じて、情報をあまり開示しないのである。率直に話すほうが自分のためになり、人間関係や組織のためになる場合でさえ、彼らは基本的に沈黙を選ぶ。

 もちろん、リーダーはすべてをさらけ出すべきだという意味ではない。だが、無意識のうちに情報を省いていることに、もっと自覚的であるべきだ。

 多くの場合、権限がある立場の人は、個人的なことや不確実さを共有するという選択肢そのものを意識していない。重要なのは、そうした瞬間に気づくことである。いったん立ち止まり、開示することを検討し、より意図的に判断することだ。

 絶対的な自信を装い、胸の内にしまっておくことが安全に感じられるかもしれない。だがそれは、リーダーシップの基盤である信頼を静かに蝕んでいく。結局のところ、人々が進んでついていこうと思うのは、信頼という暗黙の契約が根幹にあるからだ。

リーダーはなぜ必要以上に隠すのか

 リーダーシップの文脈では、信頼は2つの確信に支えられている。リーダーが善意であること(心理学でいうウォームス[温かさ])と、その善意を実現する資質や力があること(コンピタンス[能力])だ。リーダーはしばしば、疑念や弱さを認めれば有能だという印象を損なうのではないかと懸念する。しかし研究によれば、思慮のある率直さ──不確実さや間違いを認めること──は、むしろ温かさと能力の両方を強め、他者からの信頼を高めることがある。

 この事実は、リーダーにはあまり理解されていない。筆者と共同研究者はある研究で、100人以上のマネジャーに、新しく入社した従業員への自己紹介で共有しうる3つの事実を書き出してもらった。すなわち、仕事上の強み(例:「戦略立案が得意です」「プレッシャーの下でも冷静でいられます」)、 中立的な事実(例:「マラソンが好きです」「子どもが2人います」)、弱み(例:「何でも引き受けすぎるところがあります」「仕事を任せるのが得意ではありません」)である。

 そして、口頭での自己紹介でどれを伝えるかを尋ねた(複数選択可)。その結果、ほぼ全員(約96%)が「仕事上の強み」を、約3分の2が「中立的な事実」を挙げたが、「弱み」を挙げたのは3分の1にすぎなかった。

 追跡実験では、この慎重さがリーダーにとって有益なのか、それとも不利に働くのかを検証した。そのために、あるシニアエグゼクティブに2つの短い自己紹介を録音してもらった。一つは多くのマネジャーがするように、これまでのキャリアの実績を強調したもの。もう一つは、それに加えて、あまり格好のよくない事実も明かしたもの。現在の役職に就く前に、36件もの仕事に応募して不採用になった、という話である。

 その結果は印象的だった。採用候補者たちは、エグゼクティブが就職活動の苦労を打ち明けたからといって、能力が低いとは見なさなかった。むしろ信頼は高まり、強みだけをアピールする人物より、その人の下で働きたいと考える傾向が強かったのだ。これは男性リーダーと女性リーダーの双方で確認された。