ドラッカー『マネジメント[エッセンシャル版]』は翻訳者の提案から誕生した
サマリー:ドラッカーの著作を読んでみたいけれど、数多ある中からどれを読めばよいのか、迷っている人というも少なくないだろう。そんな方にまずおすすめなのが、ドラッカー著作の大多数を翻訳した上田惇生先生がすべての著作、目次やあらすじ、読みどころを紹介した『P. F. ドラッカー 完全ブックガイド』だ。本連載では、本書の内容を抜粋し、再編集したものを掲載する。今回は、翻訳者の上田先生がドラッカーに「この本は厚すぎるので、薄くしましょう」と提案したことで誕生した、『マネジメント[エッセンシャル版]』について紹介する。

『マネジメント[エッセンシャル版]』
原題:Management:Tasks,Responsibilities,Practices(1973)

『マネジメント[エッセンシャル版]——基本と原則』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2001)

【注】1975年以来、36版を重ねた『抄訳マネジメント』を2001年に改訂。入手可。

『抄訳マネジメント——課題、責任、実践』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、1975)

『マネジメント[エッセンシャル版]——基本と原則』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2001)

主な内容 

 世界で初めてマネジメントを体系化した大著『マネジメント——課題、責任、実践』のエッセンスを初心者向けにまとめた本格的入門書『抄訳マネジメント』から四半世紀。新たなマネジメントの潮流を加えてリニューアルしたのが本書『マネジメント[エッセンシャル版]——基本と原則』である。

 マネジメントは、組織で働くすべての人の道しるべ。未来のリーダー、チーム・リーダー、そしてトップマネジメントに向けて、マネジメントの使命・方法、戦略に分けてまとめた。

目次

序 新たな挑戦

パート1 マネジメントの使命
 第1章 企業の成果
 第2章 公的機関の成果
 第3章 仕事と人間
 第4章 社会的責任

パート2 マネジメントの方法
 第5章 マネジャー
 第6章 マネジメントの技能
 第7章 マネジメントの組織

パート3 マネジメントの戦略
 第8章 トップマネジメント
 第9章 マネジメントの戦略

付章 マネジメントのパラダイムが変わった

登場する主な企業・組織

 シアーズ・ローバック、IBM、三菱グループ、GM

登場する人物

 フレデリック・テイラー、エルトン・メーヨー、J. K. ガルブレイス、トーマス・ワトソン・ジュニア、ヘンリー・フォード、アルフレッド・スローン

取り上げられているコンセプト、理論、手法

 X理論、Y理論、目標管理、チーム型組織

「この本は厚すぎるので、薄くしましょう」と提案

 1300ページの大著『マネジメント』が出版されてまもなく、私はドラッカーに手紙を書きました。「あの本はあまりに厚く、重複もある。中身を変えずに薄くしたものをお見せするので、よければ訳させてほしい」というものです。われながら、なんと恐れ多いことをしたものかと思います。

 本人も原著の厚さは気になっていたのでしょう。「それでは、その薄くしたものを見せてほしい」との返事が来ました。原文には一切手をつけず、重複や重要ではない部分の削除だけで薄くしていきました。こうして出来上がったのが、『抄訳マネジメント』(1975年刊行)です。

 もちろん、わからないところや曖昧なところはすべて本人に問い合わせました。「わからないものは机の前を通すな」です。なにしろ原著800ページの本です。少なくとも100カ所以上はあったでしょう。おかげさまで超ロングセラーとなり、発売から25年で36版までいきました。

 これをもう一度訳し直したものが『マネジメント[エッセンシャル版]』です。270万部を超える大ベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(通称『もしドラ』)の中で、主人公の川島みなみ君が手にとったとされている本です。

 [エッセンシャル版]制作のきっかけは、ドラッカーが最新の論文で「マネジメントのパラダイムが変わった」と書いたことでした。パラダイム(構造)が変わったのならば、訳も変わるはず。そこで、編集と翻訳を新たにし、最新の論文を加えた新著が誕生しました。

 もちろん訳語の見直しも一から行いました。『もしドラ』のキーワードにもなった「真摯さ」が生まれたのもこのときです。それまで「integrity」は「誠実さ」と訳していたのですが、それでは言い足りない気がしてずっと気になっていました。そしてある日、新たに設立したものつくり大学(埼玉県行田市)近くのあぜ道を歩いていたとき、「真摯さ」という言葉に確信がもてたのです。

 岩崎夏海さんの『もしドラ』はすばらしい本です。女子高生がドラッカーを読み、弱小野球部を変えていく。なにより感心したのは、『マネジメント』のエッセンスから小説というバーチャルなものを生み、それがマネジメントのケーススタディになっているところでした。

 『もしドラ』のヒットとともに、この[エッセンシャル版]も広く読まれ、2011年にはついに100万部を突破しました。これまでまったく読んだことのなかった若い人たちを巻き込んだ大ブームが起こったのです。

 ドラッカーが広がっていくのはもちろんうれしいのですが、少しだけ残念なこともあります。それは、『マネジメント[エッセンシャル版]』があまりに有名になってしまったがゆえに、ドラッカーのマネジメント論だけが脚光を浴びたことです。

 しかし、本書『P. F. ドラッカー 完全ブックガイド』でも明らかなように、ドラッカーとはもっとはるかに深く、広く、高い、現代社会最高の哲人なのです。

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『P. F. ドラッカー 完全ブックガイド』

[著]上田 惇生
[内容紹介]ドラッカー教授のすべての著作、目次やあらすじ、読みどころを紹介。「どの本に何が書いてあるか」が一目でわかる。「日本における分身」上田先生ならではのドラッカーとのやりとり、翻訳秘話も満載。巻頭カラーは、ほぼ日で話題の人気対談、糸井重里×上田惇生「はじめてのドラッカー」を収録。史上初のブックガイド!

 

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