ドラッカーがイノベーションの種となりうる7つの機会を示した『イノベーションと企業家精神』
サマリー:ドラッカーの著作を読んでみたいけれど、数多ある中からどれを読めばよいのか、迷っている人というも少なくないだろう。そんな方にまずおすすめなのが、ドラッカー著作の大多数を翻訳した上田惇生先生がすべての著作、目次やあらすじ、読みどころを紹介した『P. F. ドラッカー 完全ブックガイド』だ。本連載では、本書の内容を抜粋し、再編集したものを掲載する。今回は、イノベーションの種となりうる7つの機会を「打率の高い順」に示した『イノベーションと企業家精神』について紹介する。

『イノベーションと企業家精神』
原題:Innovation and Entrepreneurship(1985)

名著集『イノベーションと企業家精神』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2007)

【注】最新版は2007年刊行の名著集に収録。入手可。

『イノベーションと企業家精神——実践と原理』(上田惇生、佐々木実智男訳、ダイヤモンド社、1985)

 選書『[新訳]イノベーションと起業家精神〈上・下〉』’(上田惇生訳、ダイヤモンド社、1997)

 名著集『イノベーションと企業家精神』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2007)

主な内容 

 膨大な数のイノベーションの事例を集め、それらの発想に至る経緯を丹念に調べ、誰にでも実行できる方法論としてまとめたのが本書『イノベーションと企業家精神』である。

 イノベーションというと、多くの人が天才によるひらめきや発明発見の類を思い浮かべる。しかし、イノベーションの種としては、それらの成功確率は高くなく、日常業務における予期せぬことが成功につながることを明らかにした。日常からイノベーションの種となりうる7つの機会を「打率の高い順」に示している。

 それらの機会を生かす企業家精神の育て方、イノベーションの種を結実させる戦略まで、イノベーション実現の原理と法則をカバーしている。

目次

第1部 イノベーションの方法
 第1章 イノベーションと企業家精神
 第2章 イノベーションのための7つの機会
 第3章 予期せぬ成功と失敗を利用する:第1の機会
 第4章 ギャップを探す:第2の機会
 第5章 ニーズを見つける:第3の機会
 第6章 産業構造の変化を知る:第4の機会
 第7章 人口構造の変化に着目する:第5の機会
 第8章 認識の変化をとらえる:第6の機会
 第9章 新しい知識を活用する:第7の機会
 第10章 アイデアによるイノベーション
 第11章 イノベーションの原理

第2部 企業家精神
 第12章 企業家としてのマネジメント
 第13章 既存企業における企業家精神
 第14章 公的機関における企業家精神
 第15章 ベンチャーのマネジメント

第3部 企業家戦略
 第16章 総力戦略
 第17章 ゲリラ戦略
 第18章 ニッチ戦略
 第19章 顧客創造戦略

終章 企業家社会

登場する主な企業・組織

 マクドナルド、GE、J. P. モルガン、AT&Tベル研究所、スリーエム、P&G、メイシーズ、IBM、松下電器産業、メリルリンチ、クライスラー、ボルボ、MCI、シティバンク、シアーズ、ソニー、ジレット、ゼロックス

登場する人物

 ジョゼフ・シュンペーター、アダム・スミス、カール・マルクス、渋沢栄一、ヴェルナー・ジーメンス

取り上げられているコンセプト、理論、手法

 プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント、キャッシュフロー経営、コンドラチェフの周期

企業家精神とは、変化を当たり前とすること

 ドラッカーは、人の手によるものに絶対のものはないといいます。あらゆるものは陳腐化する。そして、陳腐化させず進歩していくためにはイノベーションが必要です。

 かつてイノベーションは、エジソンのように傑出した個人によって生み出されました。しかし、いまや人材やお金は組織に集まっています。だからこそ、組織に属する一人ひとりがイノベーションを志し、企業家精神を持たなければなりません。会社の中にいながらにして企業家であるべき、というのがドラッカーの考えでした。

 イノベーションに成功するための手順、やるべきこと、やってはいけないことは何かを示しているのが本書です。

 幸いなことに、イノベーションと企業家精神は才能ではなく、誰もが学べるものだといいます。イノベーションに成功する人たちは「右脳と左脳の両方を使う。数字を見るとともに人を見る」「機会をとらえるにはいかなるイノベーションが必要かを分析する」といった共通点があるそうです。そうした人はおしなべて、「外に出て、顧客や利用者を見て、彼らの期待、価値、ニーズを知覚をもって知る」努力を惜しまないとのことです。

 問題は、企業家精神のほうです。ドラッカーはこのように述べています。

 「企業家精神にリスクが伴うのは、一般に企業家とされている人たちの多くが自分のしていることを理解していないからである。つまり方法論をもたないからである。初歩的な原理を守らないからである。このことは特にハイテクの企業家についていえる」

 大企業が停滞してしまうのは、この企業家精神が足りないから。逆に、企業家精神が十分あるはずのベンチャーの多くが失敗してしまうのは、マネジメント能力が足りないから。

 いずれにせよ、「イノベーションに成功するには、最初からトップの座を狙わなければならない」とのことです。大事業になるか、そこそこで終わるかは結果論の話。そもそも最初からトップを狙わなければ、自立した事業にすらなりません。

 現在では、日本でも起業が当たり前になりました。時が経ち、本書『イノベーションと企業家精神』がより興味をもって受け入れられる時代になったといえます。

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『P. F. ドラッカー 完全ブックガイド』

[著]上田 惇生
[内容紹介]ドラッカー教授のすべての著作、目次やあらすじ、読みどころを紹介。「どの本に何が書いてあるか」が一目でわかる。「日本における分身」上田先生ならではのドラッカーとのやりとり、翻訳秘話も満載。巻頭カラーは、ほぼ日で話題の人気対談、糸井重里×上田惇生「はじめてのドラッカー」を収録。史上初のブックガイド!

 

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