92歳のドラッカーが誰よりも未来を予見していた証である『ネクスト・ソサエティ』
サマリー:ドラッカーの著作を読んでみたいけれど、数多ある中からどれを読めばよいのか、迷っている人というも少なくないだろう。そんな方にまずおすすめなのが、ドラッカー著作の大多数を翻訳した上田惇生先生がすべての著作、目次やあらすじ、読みどころを紹介した『P. F. ドラッカー 完全ブックガイド』だ。本連載では、本書の内容を抜粋し、再編集したものを掲載する。今回は、ドラッカーが92歳の時に、今後出現する「異質な社会」を予見して記した『ネクスト・ソサエティ』について紹介する。

『ネクスト・ソサエティ』
原題:Managing in the Next Society(2002)

『ネクスト・ソサエティ——歴史が見たことのない未来がはじまる』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2002)

【注】入手可。

『ネクスト・ソサエティ——歴史が見たことのない未来がはじまる』(上田惇生訳、ダイヤモンド社、2002)

主な内容 

 変化する雇用構造、少子高齢化、情報技術(IT)の浸透、起業家精神の勃興などを軸に、今後出現する「異質な社会」を予見。ネクスト・ソサエティとはいかなる社会か、それはいかに経済と経営を変えるかを示した。

 本書『ネクスト・ソサエティ——歴史が見たことのない未来がはじまる』は、日本のために書かれたというほどに説得力がある。2000年代初頭のIT需要に沸く渋谷・ビットバレーで若き経営者たちのバイブルとなった。

 92歳にして、誰よりも未来を見通していた。

目次

第1部 迫り来るネクスト・ソサエティ
 第1章 ネクスト・ソサエティの姿
 第2章 社会を変える少子高齢化
 第3章 雇用の変貌/第4章 製造業のジレンマ
 第5章 企業のかたちが変わる
 第6章 トップマネジメントが変わる
 第7章 ネクスト・ソサエティに備えて

第2部 IT社会のゆくえ
 第1章 IT革命の先に何があるか?
 第2章 爆発するインターネットの世界
 第3章 コンピュータ・リテラシーから情報リテラシーへ
 第4章 eコマースは企業活動をどう変えるか?
 第5章 ニューエコノミー、いまだ到来せず
 第6章 明日のトップが果たすべき五つの課題

第3部 ビジネス・チャンス
 第1章 起業家とイノベーション
 第2章 人こそビジネスの源泉
 第3章 金融サービス業の危機とチャンス
 第4章 資本主義を越えて

第4部 社会か、経済か
 第1章 社会の一体性をいかにして回復するか?
 第2章 対峙するグローバル経済と国家
 第3章 大事なのは社会だ:日本の先送り戦略の意図
 第4章 NPOが都市コミュニティをもたらす

登場する主な企業・組織

 コーニング社、GM、デルファイ、ABB、JPモルガン、ゴールドマンサックスほか金融会社

登場する人物

 ロナルド・コース、ジャック・ウェルチ、アンディ・グローヴ

取り上げられているコンセプト、理論、手法

 IT革命、eコマース、eラーニング、チェンジ・エージェント、イノベーション、NPO

若手経営者熱狂「日本のために書かれた一冊」

 「変化が本書の主題である。すでに起こったことである。次の社会——ネクスト・ソサエティはすでに到来した。もとには戻らない」

 ネクスト・ソサエティとは何か。それは「知識社会である。知識が中核の資源となり、知識労働者が中核の働き手となる」とドラッカーは述べ、これからは経済が社会を決めるのではなく、社会が経済を決めるようになると、新しい時代の到来を宣言しました。

 「今後2、30年の間に、コンピュータの出現から今日までに見られたよりも大きな技術の変化、そしてそれ以上に大きな産業構造、経済構造、さらには社会構造の変化が見られることになる」

 「急激な変化と乱気流の時代にあっては、たんなる対応のうまさでは成功は望みえない。企業、NPO、政府機関のいずれであれ、その大小を問わず、大きな流れを知り、基本に従わなければならない」

 ドラッカー92歳にして、ますます活躍中でした。世界中の最先端にある人たちとの交流から、ネクスト・ソサエティの到来を予感し、予見し、準備していました。

 このパラダイム転換を説く本書『ネクスト・ソサエティ』は熱狂をもって迎えられましたが、とくに顕著だったのは、若手起業家、経営者たちの反応のよさでした。若者へのメッセージを集めた『プロフェッショナルの条件』が世界的ベストセラーになったすぐあと、ということもあったでしょう。

 また、ちょうど日本ではパソコンが一般家庭にまで普及した時期。IT革命が叫ばれ、インターネットが世界を変えるとばかりに起業をする若者が増えていました。IT社会、eコマース、起業家……などなど、これらはそのまま、本書の後半部分に当てはまります。まさに時代が変わった象徴ともいうべき一冊ととらえられたのです。

 私は、これまで雑誌や新聞でドラッカーの本を紹介したり、ドラッカーについてメディアで語ったりしたことのある人たちを、リストにまとめています。そのなかでも、自分に一番影響を与えた本として、『ネクスト・ソサエティ』を選ぶ人がかなり多かったと記憶しています。

 本書は不思議な本です。読んだ誰もが、その世界の大きさに唖然とするだけ。それがドラッカーなのです。

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