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エグゼクティブのコミュニケーションによるリスク
ソーシャルメディアの時代において、世間の注目はシェアのスピードに左右される。たった一つのインタビュー映像でも数時間後には広く拡散して、リーダーの判断力や信頼性や意図に関する世間の認識ができ上がってしまう。このため経営幹部にとっては、メディアに登場するすべての機会がリスクを伴うようになった。一瞬の出来事が、よくも悪くも、彼らの評判を一変するおそれがある。
ここ数カ月だけでも、オープンAIのサム・アルトマンCEOが、あるインタビューでAIの環境負荷を聞かれた時の発言が、懸念を軽視していると広く見なされ、批判にさらされた。ゲーミングデバイスメーカー大手レイザー(Razer)のミンリャン・タンCEOは、ゲームにおけるAIの役割について、かねて物議を醸していた見解を擁護して反発を招いた。業界を問わず、同じような出来事は何度も起きている。ウォルト・ディズニーのロバート・アイガー前CEOは、ハリウッドのストライキを「気がかりだ」と語って批判を浴び、オーストラリアの不動産開発大手ガーナー・グループ(Gurner Group)の創業者であるティム・ガーナー会長は、生中継のインタビューで、「失業率は上昇すべきであり、経済はもっと『痛み』を感じるべきだ」と発言して、非難を浴びた。
こうした状況(間違った理由で発言が拡散したり、エグゼクティブが判断ミスを犯したりした時)では、一瞬の出来事が誇張されたり、文脈から切り離されたりしがちだ。ひとたびリーダーの発言が広く知れ渡ってしまうと、発言の意図より、それがどのように受け止められたかに注目が集まる。ごく限定的な状況について言われたことや、とっさの発言が、あっという間に評判に影響を与える火種になる。
たとえリーダーが、自分は基本的に裏方の人間だと思っていても、大衆は企業とリーダーを結びつけて考える。米調査会社APCOの2024年の調査では、アメリカ人の4分の3以上が、CEOの評判がその会社への投資判断に影響を与えると答えた。世界のエグゼクティブの45%が、CEOや会長の評判は会社の評判の重要な牽引役になると捉えている。
筆者は、シニアリーダーたちに、重要な局面におけるコミュニケーションに関する助言をする中で、ミスを増幅する可視性が、信頼醸成にも活用できることに気がついた。リーダーが適切な判断力を持ってコミュニケーションを図り、オーディエンスをリスペクトすれば、インタビューは信頼醸成の機会になる。そして信頼があれば、人々はそのブランドの商品を購入したり、より大きな金額を支払ってもよいと思ったりするようになる。重要なのは、リスクを管理しつつ、その恩恵を享受する方法を知ることだ。
リーダーシップ露出曲線を理解する
メディアのインタビューで多くのリーダーが犯す過ちは、論点を過剰に用意する一方で、それを活用するのに必要な判断力の準備を怠ることだ。この判断力とは、プレッシャー下で、その時に真に重要なこと、つまり何を強調し、何を省き、状況をどう位置づければオーディエンスにきちんと伝わるかを見極める能力である。世間の目が厳しくなると、こうしたリアルタイムの判断力のほうが、完璧な言葉選びよりもずっと重要になる。
このことを考える時に役に立つのが、筆者が「リーダーシップ露出曲線」と呼ぶ枠組みだ。これは認知度と意思決定と組織リスクの関係を示すもので、筆者はさまざまな業界のリーダーに使っている。リーダーの認知度が高まると、インタビュー中に下す判断のリスクも高くなる。インタビューは大きな注目を集めるが、インタビューされる側がコントロールできることは比較的小さいため、認知度が高まるほどその場で下す判断のリスクは高くなる。
図表 リーダーシップ露出曲線
シニアリーダーは、大きく分けて3種類のインタビューを受ける傾向がある。それぞれ露出曲線の異なるポイントに位置し、それぞれ異なる判断力を試される。インタビューのシナリオによって、組織がどのタイプのリスクにさらされるかを理解すれば、エグゼクティブはメッセージングだけでなく、自分の判断力の準備もできる。
・信頼性インタビュー:「なぜ、あなたなのか」
・ポジショニング・インタビュー:「どこへ向かっているのか」
・危機インタビュー:「あなたを信頼してよいのか」
そこで、筆者がエグゼクティブリーダーをコーチしてきた経験から、実践的で繰り返し活用できる準備方法を実例を踏まえて紹介しよう。
信頼性インタビュー:「なぜ、あなたなのか」
試されること:エグゼクティブとしての判断力――能力と権威をどのように示すか
新たに昇進したリーダーや、新たに注目されるようになったリーダーは、同様の課題に直面する。つまり、リーダーとしての準備具合をステークホルダーに評価される中で、自分の能力を示すことだ。こうした初期のインタビューは、そのリーダーのイメージのスナップショットになることが多い。つまり、正式な実績を上げる前に、リーダーとして能力があるように見えるかどうかを素早く示す指標だ。
筆者はかつて、コンサルティング会社でグローバルAIガバナンス部門のリーダーに昇進したばかりの、AIテクノロジー専門家と仕事をしたことがある。彼は数週間後に、全米規模のビジネス誌のインタビューを受けることになっていた。極めて注目されている分野に対する会社のアプローチを代表する顔として紹介されるというのだ。
筆者らが目指したのは、彼の専門性をアピールするだけでなく、その専門性のどの部分がオーディエンスの信頼醸成につながるか見極めることだった。そこで、このポジションにある誰もが使える3つのステップに焦点を絞った。
1. アンカリング・メッセージを定義する
インタビューでリーダーが目指すべきは、知っていることすべてを説明することではなく、オーディエンスがリーダーの言葉を解釈する時の基礎となるような、全体をまとめる原則を示すことだ。リーダーの回答の方向性を決定する中核的概念と考えるとよいだろう。このアンカーが明確になると、準備は簡単になる。そのメッセージを強化する回答を構築すればよいからだ。
自分のアンカーを見つけるために、次のことを自問してみよう。
・私は自分の役割や領域について、人々に何を理解してもらいたいか
・私の回答によって、どのような視点を補強したいか
・人々の記憶に残ってほしい中核的概念は何か
筆者のクライアントの場合、中核的概念は明快だった。すなわちAIプロジェクトの80%が失敗に終わる本当の理由は、技術力が弱いからではなく、ガバナンスが動き始めるのが遅すぎるからだ。このように位置づけたところ、彼は厳格性と説明責任を重視するリーダーと見なされ、次の話題に移っても安定を維持できた。
2. 組織の優先順位を反映した事例でアンカーを支える
この最大のポイントを定義したら、それを現実にする具体例をいくつか選ぶ。あなたのアイデアを具現化する決定やトレードオフや結果を考えてみよう。それと同じくらい重要なのは、こうした事例があなたの専門性だけでなく、組織の重点課題を強化するようにすることだ。
筆者のクライアントの場合、これは彼の主張を裏づける事例の短いリストを作成することを意味した。ワークフローにおけるバイアス軽減や、ベンチマークガバナンス方針、責任あるAIケース(測定可能な成果つき)などだ。また、会社全体のコミュニケーションをチェックして、自分の回答が会社の立場を強化するよう確保した。これにより彼は信頼できる総合的な人物というイメージを確立できた。
3. 難しい質問を受ける練習をし、オーディエンスにわかりやすい回答をつくる
最も手強い質問によって、技術不足が露呈することは滅多にない。それが浮き彫りにするのは、決定の論理だ。組織の失敗や難しいトレードオフ(ひどい結果だったり、責任がチーム全体で分担されていたりする時など)についての質問に備えよう。質問される前に、それをどのように話すかを決めておき、後は場の空気を読む練習をしよう。
インタビューを受けるリーダーは、同時に2つのオーディエンスを相手にしている。一方はインタビュアーで、会話のペース配分と深みを誘導する。もう一方は一般のオーディエンスで、あなたがリーダーの役割にふさわしいかどうかを判断する。インタビュアーがどこで問いただしてくるか、注目が低下するのはどこか、混乱が生じるのはどこかなどの合図をよく見て、それに基づき詳細を加えるべきタイミングや、シンプルに答えるべきタイミング、アンカーメッセージに立ち返るべきタイミングを判断しよう。
筆者のクライアントの場合、「あなたの会社の足りない部分はどこですか」といった質問に答える練習や、技術的な説明に平易な表現によるたとえ話を織り交ぜるといった練習をした。その結果、単純化されたストーリーではなく、専門性とプレッシャー下での健全な判断力を示唆する賢いストーリーを構築できた。
ポジショニング・インタビュー:「どこへ向かっているのか」
試されていること:戦略的判断力――あなたは市場をどう解釈し、組織を一致させるか
ポジショニング・インタビュー(「あなたはどこへ向かっているのか」)は、リーダーがシステムの中できちんと機能するかだけでなく、システムをきちんと解釈できるかどうかを試す。こうしたインタビューは、自分のイメージを「有能な実行者」から、「市場においてより幅広く価値の高い役割を担う戦略的思考者」へと変えたいリーダーにとって、とりわけ強力な機会となる。
筆者はかつて、製薬会社のシニアバイスプレジデントが有力な業界誌の特集記事に取り上げられるための準備を手伝ったことがある。その会社が扱う分野は、先見の明とシステムレベルの思考が報われ始めつつあり、その会社は信頼できるメーカー(手堅いが、取りたてて戦略的ではない)と広く見なされていた。そのイメージを変えて、質の高い提携関係を築き、投資と成長の扉を開くことが、そのバイスプレジデントの目標だった。
そこで筆者らは、3つの措置に焦点を絞った。
1. シフトを定義する
強力なリーダーは野心を広く伝えるだけでなく、その背後にある戦略的論理を説明する。まず、現在のあなたの会社のイメージと、今後はどのような認識を持たれる必要があるかの間のギャップを明らかにしよう。
筆者のクライアントの場合、このシフトはある決定的なインサイトに集約された。すなわち、「今日の医薬品供給にとって最大の脅威は生産能力ではなく、平時にしか機能しない脆弱な供給システムだ」。この発言を機に、彼のイメージは信頼できる実務者から、未来志向の業界の声へと変わった。
2. 対外的な証明にシフトを固定する
社外のステークホルダーは、こうしたインタビューを通じて、ある会社が社内できちんと機能するかだけでなく、業界を形成する存在かどうか判断する。あなたが望む変化がすでに実現に向かっていることを示すリアルな結果(オーディエンスが確認・理解できるアクションや成果)を伝えることに焦点を絞ろう。目的は、内部指標以上のインパクトを示し、これは一度きりの方向転換ではなく、組織が積極的に目指す方向性であると示すことだ。
筆者のクライアントは、業界全体のパートナーシップや、不足を早期発見するためのデータ共有、そして必須医薬品のアクセス安定化の取り組みを指摘して、彼の会社が医薬品供給における現実のリスクに取り組んでいることを強調した。そのメッセージは明快だった。彼の会社は薬を製造しているだけでなく、システム全体のレジリエンスを強化している、というものだ。
3. 長期戦略を幅広い環境と結びつける
シフトを定義し、それを裏づける証拠を示したら、次は一歩下がってみてみよう。組織の方向性と業界を形作る要素とを結びつけよう。具体的には、市場の変化や規制、技術、サプライチェーンのリスクなどだ。ここから、あなたのナラティブは戦略的な意味を持ち始める。早計なアイデアを採用することは避け、今後の優先課題に集中しよう。
筆者のクライアントの場合、これは規制圧力や地政学的リスク、脆弱なグローバルサプライチェーンがどのように収れんしているかや、こうした要素の相互作用ゆえにシステムのレジリエンス強化を戦略的優先課題としなければいけない理由を明らかにすることを意味した。おかげで彼はインタビューで、自社の今後の方向性と、なぜ今その方向性が理にかなっているかを説明して、自社を環境を読み取れる業界のリーダーに位置づけることができた。
危機インタビュー:「あなたを信頼してよいのか」
試されること:危機判断力――安定をどのように示し、ステークホルダーを安心させるか
組織やリーダーシップへの信頼が脆弱な時、インタビューは優れた能力ではなく、安定を試す場になる。リーダーはこの機会を利用して安定感を醸し出し、明確かつ一貫性のあるナラティブを示し、憶測を煽ることなくステークホルダーを安心させることができる。
筆者のクライアントの一人は、プロフェッショナルサービス会社のリーダーで、複数のシニアパートナーが競合企業を立ち上げるために辞めていった後、マネジングパートナーに就任した。シニアパートナーが複数辞めたことは、社内を動揺させていた。顧客は引き続き彼女の会社を使い続けるかどうか迷い、アソシエート(新人)は将来を心配し、業界誌はこの会社の安定を疑問視した。だが、このマネジングパートナーにとって、大手ビジネス誌の初インタビューを受けた時、今後の基調を決定づけることになっていた。
彼女は、その会社には堅実な前途があり、そしてリーダーシップが交代しても顧客サービスや組織の勢いに変化はないと示すことを目指した。
そこで私たちは3つのステップに焦点を絞った。
1. ステークホルダーの感情を認める
信頼とは、話題をそらすのではなく、人々の感情を認めることから始まる。自分自身にいくつか問いを投げかけ、ステークホルダーが抱えているかもしれない感情や情報面でのギャップを明らかにしよう。
・何を一番心配しているのか
・どこで噂は生まれているのか
・あなたがまだ対処していないと、懐疑的なステークホルダーが指摘する部分は何か。
不透明感や混乱や疲れを認めると、リーダーが従業員や顧客、パートナー、取締役が経験している現実に注意を払っている、地に足がついていると、彼らを安心させることができる。
筆者のクライアントの場合、これはインタビュー前に集中的な傾聴を実施することを意味した。彼女は、ライバル企業に顧客を奪われることを懸念するパートナーと話をし、顧客がどのような問い合わせをしてきているかをクライアントサービスリーダーに尋ね、日々の不安を近くで見ている中間管理職の声も聞いた。また、自分の参謀(CoS)に、社内での会話から感じ取った傾向を簡潔に報告させた。
その会話はあるパターンを明らかにし、そこから彼女は深い気づきを得た。すなわち、変化は耐えられるし管理もできるが、混乱は組織を不安定化する、ということだ。これが明らかになったことにより、彼女は権威をもって話し、ステークホルダーが最も必要としていること(変化についての信頼できる一貫した説明と、次に何が起こるのかについての共通の理解)に焦点を絞ることができた。
2. 事実を正確に把握し、規律を保つ
混乱が組織を不安定にする場合、危機におけるリーダーの仕事は、曖昧さをできるだけ取り除くことだ。それは「ナラティブのコントロール」から「ナラティブによる規律」へと移行することを意味する。まずは、基本的な事実(何が起こり、どのような決定が下され、公に話題にするのが適切なことと不適切なことなど)について、経営幹部と広報担当リーダーが足並みを揃えよう。そのうえで、これらの事実を正確かつ中立的な言葉で表現することに注力する。ここでは混み入ったメッセージよりも、正確で抑制の効いたメッセージのほうが、オーディエンスに信頼感を伝えられる。変更内容を、解釈を加えたり、弁解したり、その動機を推測したりせずに伝えよう。
筆者のクライアントは、インタビューを受ける前に、法務と人事、そして運営委員会に相談し、協力し、リーダーシップ交代について共通の事実説明を構築した。また、この交代を直接取り上げた簡潔な声明も作成した。この組み合わせにより、彼女は正確かつ一貫して質問に答えることができたうえ、社内の基本姿勢も設定できた。社外でこれとは異なるナラティブが示されても、彼女の冷静な振る舞いによって憶測は抑制された。より重要なことに、それはステークホルダーを安心させた。
3. 継続性を強化し、次のステップを明確に示す
どのようなものであれ変化が組織を混乱させる時は、継続が安定をもたらす。継続的なコミットメント、チームの成果、そして共有する価値観を指摘すれば、ビジネスが適応を果たしながらも安定していると、ステークホルダーを安心させることができる。同時に、人々は次に何が起こるのかに注意深く耳を傾けるだろう。現在の成果や短期的な重点課題、あるいはリーダーの判断基準を明確にすれば、過剰な約束をしたり、まだコントロールできない結果を提示したりしなくても、信頼感を築くことができる。
筆者のクライアントは、長年の顧客関係や、サービス提供の継続性、そして退任するリーダーへの敬意を強調した論点をリストアップした。また、即座に行動を起こすべきいくつかの事案にもコミットした。たとえば、重要な顧客と直接話すことや、現在進行中のプロジェクトを維持することなどだ。これらの措置は全体として手堅い前進を示した。組織にはしっかりした要があり、パーパスを持って動いていた。
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今日のメディア環境において、リーダーシップは社内での意思決定だけでなく、社外のセンスメイキングによっても発揮される。組織が信頼や信用を構築するうえで、社外でのストーリーテリングの重みが増しており、リーダーがリスクを管理して優位を確立するためのハードルは高くなっている。意思決定者は、彼らが代表するブランドに人間味を与える。そして、インタビューがインサイトや証拠、組織戦略に根差していると、一度きりの露出以上のものをもたらす。彼らは露出よりも、信頼性によって組織を前進させる。このようにインタビューは、その組織が次に何をできるかに影響を与える転換点になる。
"How to Nail Your Next Media Interview," HBR.org, April 29, 2026.








