当然のことながら、音楽や楽器やオーディオ機器についての情報インプットも旺盛になります。雑誌(たとえばオーディオに関しては「ステレオサウンド」というわりとマニアックな季刊雑誌を隅から隅まで読んでいます)はもちろん、ネットの記事を検索することも少なくありません。結果的に膨大な情報にアクセスしているのですが、自然と注意がついてきます。なぜかというと、単純に楽しいからです。趣味であれば情報のインプット自体が目的なので、いくらでも情報収集すればいい。
ところが、人の役に立つ成果が生み出されなければ、仕事とはいえません。自分では仕事と思っていても、漫然と情報をインプットしているだけで、アウトプットが出なければそれは趣味の領域です。一方、仕事での情報インプットは、アウトプットを生み出し、人の役に立つための手段に過ぎませんから、インプットそれ自体が全部楽しいということはあまりない。目に触れる情報はそれこそ膨大ですから、アウトプットにつながるような注意のフィルターが決定的に重要になります。
アウトプットの手段としてのインプット
本屋を覗けば、「情報整理術」とか「情報収集術」といったタイトルのノウハウ本が実にたくさんあることに気づかされます。リアルタイムに情報を共有できるTwitterなどのツールも人気があります。多くのビジネスパーソンが情報の収集や活用に関心を持ち、さまざまなメディアからせっせと情報をインプットしているわけですが、ほとんどの場合は結局のところ「趣味」にとどまっているのではないでしょうか。本人は「仕事に役立つ」と思ってやっているかもしれませんが、アウトプットに変換され、成果につながることはごくわずかだというのが実情だと思います。
アウトプットを目的とした仕事であれば、自分が注意を向けられる対象は数が限られてきます。僕の場合でいえば、今、この執筆時点で気になっている仕事のテーマは「戦略ストーリーにおける非合理の理」とか「可視性の低い価値のつくりこみ」とか「プロセス型からプロフェッショナル型への経営システムの転換」とか(このそれぞれについて内容をお話しするとひとつがすぐにこの連載の100ページ分ぐらいになってしまうのでここでは触れませんが)、せいぜい3つか4つです。この3つか4つがいつでも注意のフィルターとなって情報をインプットするからこそ、後工程のアウトプットにつながるわけです。