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リーダーが未来を語るだけでは不十分
望ましい未来に向けたビジョンを打ち出すことは、リーダーの重要な役割の一つだ。しかし、今日のように、不確実性が高まっていたり、激変に見舞われていたりする環境では、ほとんどの場合、ビジョンを示すだけでは長期間にわたって従業員の努力を持続させられない。
このような環境で従業員がエンゲージメントを抱くか否かは、リーダーが掲げる未来が実現可能で、追求するに値すると思えるかどうかで決まる。端的にいえば、その未来が希望をかき立てるかどうかにかかっているのだ。
希望はしばしば、希望的観測と混同される。いずれも未来への願望である点は共通しているが、希望は目標志向だという点で希望的観測とは異なる。希望は、現在の行動と望ましい未来を――成功が保証されておらず、進歩のペースが一定とは限らないとしても――結びつける。
心理学の研究によると、希望には、2つの相互に関連のある思考のプロセスが関係している。一つは自己効力感思考、すなわち「自分にはできる」という確信を抱く原動力になる「意志力」であり、もう一つは経路思考、すなわち望ましい結果への道筋を生み出す「手段探索力」である。
この両者が合わさることにより、ポジティブなモチベーションが生まれる。従業員たちは、障害にぶつかっても目標に向けて進み続けるようになるのだ。
希望は、目標志向という点で楽観主義とも異なる。楽観主義者が「状況はきっとよくなるだろう」と考えるのに対し、希望を抱いている人は、「私は状況をよくできる。その方法はこうだ」というふうに考える。
研究によると、希望のマインドセットを持っている従業員は、仕事上の問題に対してより独創的な解決策を見出し、より高いパフォーマンス評価を得ることができる。1万1000人以上の従業員を対象にした研究によると、希望は、職場でのウェルビーイングおよびポジティブな士気と相関関係がある。その結果として、病欠や燃え尽き、退職が減り、生産性が高まると期待できる。
しかし、リーダーが希望を語るだけでは、従業員に希望を抱かせることはできない。リーダーは、希望を育む必要がある。そしてそのためには、希望の本質を理解しなくてはならない。希望は常に変化し続けるものであり、さまざまな形態を取りうる。その中には、好ましい形態もあれば好ましくない形態もある。
本稿の筆者二人(マイスターとデール)は、エグゼクティブ教育に特化した有力ビジネススクールである国際経営開発研究所(IMD)の行動科学者だ。リーダーシップ、従業員のウェルビーイング、組織のパフォーマンスについて研究している。もう一人の筆者(バッハ)は、IMDの学長であり、企業のCEOたちと緊密に協働している。
本稿では、筆者らが携わってきた研究、そして何百社ものグローバル企業の何千人ものリーダーたちに助言してきた経験をもとに、希望にはどのような形態があるのか、それぞれの形態の希望は組織にどのような影響を及ぼすのか、そして最も生産的な形態の希望を活かすためにどのような措置が有効なのかを論じる。







