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周囲の力を引き上げる
スーパーファシリテーターの力
20年にわたりNBA(全米バスケットボール協会)で活躍してきたクリス・ポールは、個人として素晴らしいキャリアの持ち主である。しかし、彼には他にない特別な統計データがある。ポールが新しいチームに加わった4回すべてにおいて、そのチームは2年以内に過去最高の成績を挙げているのである。このような影響をもたらした選手は他にいない。これは現在、「クリス・ポール効果」として知られている。
NBAの歴史の中でポールは特異な選手かもしれないが、私たちの多くは彼のような人物に遭遇したことがある。周囲の全員をよりよい状態に引き上げ、各メンバーの独自の強みを一種の認知的超個体へと統合し、単独では成しえなかったことを達成する人物である。このような人物を「スーパーファシリテーター」と呼ぶことにしよう。
近年、新たな研究の波が集団の成功に関する私たちの理解を大きく変え、才能あるチームメンバーという枠組みをはるかに超えたファシリテーターの事例が紹介されている。ベストセラー作家のチャールズ・デュヒッグが描いたスーパーコミュニケーターが「人間相互の最善の理解を促す者」であるならば、スーパーファシリテーターは「人々を最善の形でまとめ上げることで、集団のパフォーマンスを構築する者」だ。
スーパーファシリテーターは、さまざまな専門性を統合し、全員の等しい貢献を促し、信頼感を醸成する。そうすることで集合知を創出し、判断や革新、問題解決のための集団的能力をつくり出す。彼らはチームリーダーである場合が多いが、ポールのように仲間を最善の状態に引き上げるチームメートという場合もある。
本稿では、筆者の研究室が明らかにしたものも含め、スーパーファシリテーターや集合知、チームパフォーマンスに関する重要な発見を紹介する。これらの中で最も重要なものの一つは、スーパーファシリテーションが単なる特質ではなく、スキルであるということだ。私たちは生来のスーパーファシリテーターを特定してエンパワーできるというだけではなく、誰でも訓練によってスーパーファシリテーターになることができる。これは希望の持てるニュースといえるだろう。
超個体としてのチーム
私たちの文化は、イノベーションを単独の試みと見なす傾向がある。たった一人で知の山頂に登り詰めるというイメージだ。偉大なイノベーターは、画期的成果を挙げるまで人々から誤解されたり無視されたりしていて、無名のうちに努力を続ける。その後に、やっと世界が認めるようになるのだ。
このステレオタイプの見方をリーダーに当てはめると、有害な組織慣行に行き着きかねない。筆者の同僚でスタンフォード大学教授のキャロル・ドゥエックらは2019年の研究[注1]で、フォーチュン500における433社のミッションステートメントを分析し、それらを「最高の職場ランキング」を発表しているグラスドアの評価と比較した。その結果、個人の才能に着目して「天才文化」を強調する企業は評価が低いことが明らかになった。フォローアップ研究では、同じ企業がコラボレーション、信頼性、真摯さの点でも劣っていることがわかっている。
さらには、先見の明のあるCEOが会社のあらゆる階層を制御するというリーダーシップスタイルも、悪影響を及ぼしている。Yコンビネーターの共同創業者であるポール・グレアムは2024年に、個人主義に大きく偏り、権威主義や、さらには虐待行為すら正当化するのに使用されうるこのスタイルを表すのに、「創業者モード」という言葉をつくり出した。
天才とはしばしば、チームによる連携作業の結果であることがわかっている。心理学者でカーネギーメロン大学テッパースクール・オブ・ビジネス教授のアニタ・ウーリーとその同僚らは、2010年に集団を対象とする知能テストを開発した[注2]。個人を対象とする知能テストと同様に、このテストでは賢い経済的選択を行う能力や複雑な方程式を解く能力、倫理的判断で合意を図る能力など、複数のタイプの問題解決能力を検証する。
ウーリーは、これらのテストのいくつかで成績のよいグループは、他のテストでも成績がよい傾向にあることを発見した。これは、それらのチームが集合知を備えていることを示唆するものだ。



