弱さを見せ合うことで全員が成長できる組織になる

編集部(以下色文字):多くのリーダーが成長し続ける強いチームをつくりたいと考えながら、その実現に苦労しています。キーガン教授は、著書『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか[注1]』の中で、成長し続ける強い組織として「発達指向型組織」(DDO:Deliberately Developmental Organization)を提唱されていますが、これはどのような組織ですか。

キーガン(以下略):組織の全員が高いレベルで仕事をしながら成長し、発達し続けられるようサポートする世界最高の組織文化をつくりたいと考えた時、その職場はどのようなものになるでしょうか。DDOは、その問いに答えようと、真剣に取り組んでいる組織を指します。

 組織全員の発達を促す文化をつくろうとするDDOは、それぞれが組織の目的、精神、個性に合った形で取り組むため、その形は一つひとつ異なります。たとえば、「人間とは何か」と聞かれたら、子どももいれば、大人もいますよね。それと同様に、DDOとして進化の初期段階にある組織もあれば、より成熟した段階の組織もあり、成熟度は異なります。成熟の途上にあるかのような様子が見て取れたとしても、それらはすべてDDOなのです。

 DDOが組織全員の発達を重視するのは、なぜでしょうか。すでに十分な能力を持つ大人を雇用しながら、あえて組織がその成長を支援する意義を教えてください。

 皆さん、このようにお考えではないでしょうか。「子どもではなく、大人を雇っているのだから、彼らを発達させる必要などない」「多くの候補者の中から、高学歴で非常に才能のある人々を選んで雇ったのだから、彼らはすでに完成されている」と。

 私たちは長い歴史の中で、「人間は人生の最初の25年ほどの間に教育を受け、学校を卒業した時点で準備が整い、そこから仕事をする」というモデルを当然のことだと考えるようになりました。それは、基本的に「大人の発達」という現象を考慮しないものです。しかし、発達は人生の最初の25年で終わるわけではありません。

 私が大学院に進学した1970年頃は、発達心理学者といえば、乳幼児、子ども、青年を研究する人のことでした。なぜなら、当時は精神的、心理的な発達を、身体的な発達と結びつけており、生まれてからの約25年ですべての発達を終えると考えられていたからです。ですから、25歳で教育を終え、そこから仕事を始めるという考え方は理にかなっていました。

 しかしこの50年ほどで心理学に「大人の発達」という領域ができ、身体的には25歳で成長が止まったとしても、精神的、心理的にはさらに成長できると認識されるようになりました。ですから、組織のメンバーがすでに大人であっても、支援が成長につながり、ひいては組織の成長につながるのです。

 また近年、バーンアウト(燃え尽き症候群)が組織の大きな課題になっています。これは過度な負担や、多くの仕事を抱えることで起こると考えられがちですが、そうした状態に置かれた全員が燃え尽きているわけではありません。個人のレベルで言えば、燃え尽き症候群は、あまりにも長い間、同じ発達段階に留まり、成長を感じられないまま働くために起こることがわかっています。バーンアウトを防ぐ意味でも、人は成長し続ける必要があるといえるでしょう。

 組織のレベルで考えても、現在や近い将来に大きな課題に直面していないのであれば、発達をサポートしようという強い動機は生まれないかもしれません。しかし、現実の世界では、どの国のどの組織も、あらゆる種類の課題やリスク、あるいは活用すべきチャンスに直面しています。そうした事態に対処するためにも、個人は成長し、発達し続けなければなりませんし、組織も将来の課題に対応するために新しい能力を身につけられるよう、人々に成長し続けてもらう必要があるのです。