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不安を抱えた上司への対処に苦慮する人は多い
あなたは有能で、物事を戦略的に考えるプロフェッショナルである。明晰な思考力と優れた実行力を持ち、成果を挙げる。しかし、仕事において誰も教えてくれなかったことが一つある。それは、不安定さを心に抱えた上司や同僚にどのように対処するか、その方法である。
認めたがらない組織が多いが、これは多くの組織に共通する問題だ。組織の上層部の間でさえ、珍しいことではない。最近の調査では、成人の約36%が対人関係に不安を抱いていることがわかっている[注1]。また、コーン・フェリーが2024年に実施した調査によると、米国のCEOの71%、CEO以外の上級幹部の65%にインポスター症候群の症状が見られるという[注2]。インポスター症候群とは、自分に能力がないと見抜かれてしまうのではないかと、常に不安を感じる症状を指す。CEOや経営幹部、取締役会のメンバーなどのリーダーたちは、カリスマ性のある自信家に見えるかもしれない。だが実は、プレッシャーを受けて、自分の無能さや拒絶されることへの恐怖が消えず、それが密かに意思決定をゆがめ、他者との協調を妨げている。その結果、部下に対して過度なマイクロマネジメントを行ったり、周囲に心を閉ざしたり、他者の助言を拒んだり、必要以上に称賛を求めたりしてしまう。
そういう人の下で、あるいはそういう人と一緒に働いているのは、あなただけではない。ピュー・リサーチセンターの2023年の報告書によると、米国の労働者の3分の1以上は、上司がやや、あるいは非常に「取り合ってくれない」または「予測不能」だと感じていて、こうした特性が不安感と関係していると回答している[注3]。チームがこうしたマネジャーや同僚に悪影響を受けると、ストレスが蔓延し、疲労感が高まり、離職者が増えていく。
だが、上司や幹部のメンタルや行動が不安定な場合でも、そうした「上司や幹部と良好な関係を構築する」ことは可能だ。筆者らは組織における対人関係のダイナミクスについて学術的な研究に取り組み、経営幹部を支援してきた。そしてそれらに基づき、不安定さを抱えるリーダーの2つの典型的な形態に対処し、そうしたマネジャー、同僚、チームメンバーと仕事上で効果的な関係を築くための実践的フレームワークを構築した。
「不安定さ」の2つの形態
不安感は、本質的に人間関係に起因する。幼少期の経験によって形成され、ストレスを受けると増幅する[注4]。筆者らの研究では、不安型と回避型という、よく見られる2つのパターンの不安定な対人関係を取り上げ、それが職場の人間関係にどのように表れるかを探ってきた[注5]。
不安型のリーダーは、自分を肯定してくれる関係を強く望む。持続的で、往々にして非現実的でもあるつながりを切望し、称賛されると喜ぶ一方で、疎外感を抱いたり批判されたりすると落ち込んでしまう。そういうリーダーは、部下をマイクロマネジメントしたり、必要以上に謝罪したり、人と会話をするたびに、あるいは自分が軽蔑されているのではないかと想像するたびに、急に考えを変えたりすることがある。チームメンバーと親密になろうとするが、対処できなくなるとメンバーを遠ざける。そうしたリーダーのエネルギーは周囲に伝染し、刺激を与えることもあるが、チームが感情の浮き沈みに巻き込まれて、疲れ果ててしまうこともある。
『ワシントン・ポスト』紙の元発行人だった故キャサリン・グラハムがそうだった。彼女は1963年に夫が自殺したのち、予期せぬ形で同紙の経営を引き継ぎ、不安を抱えながらリーダーとしての道を歩み始めた。彼女は会議で恐怖を感じて、率直に話すのをためらっていたことをのちに認めている。彼女自身の回顧録[注6]や伝記によれば、彼女は「男性社会に放り込まれた自信のない女性」と見なされ、その結果、1975年に起きた印刷工のストライキへの対処を誤るなどミスを犯した。だが、当時の編集主幹ベン・ブラッドリーと良好な関係を築いたこともあり、彼女はこうした不安を徐々に克服していった。
また、本稿の筆者の一人であるイップがコーチングをしたある財務幹部も同様だった。彼の課題は専門能力ではなく、CEOが彼の提案に疑問を投げかけるたびに、見るからに不安そうにすることだった。この幹部は、仕事上の意見の相違と、自分自身が拒絶されることを区別できずに苦労していた。これもまたよくある問題である。
それに対して、回避型のリーダーは、一見落ち着いていて理性的に見え、統制力があり、主体性があるイメージを与える。しかし内面では、彼らは自分の弱さに戸惑いを感じ、そのせいで周囲から距離を置き、近づきにくい。人に頼らないことを誇りとし、率直な対話を避け、批判を拒み、迷いを滅多に見せない。他者に頼りすぎることへの恐怖から壁を築くため、そういうリーダーと働く場合、壁越しに接しているかのようになる。彼らは異論を唱えられると心を閉ざし、重大な局面では過度に用心深い。
アップル共同創業者の故スティーブ・ジョブズは、この回避型の傾向を示していたと評されることがある。彼は周りと心の距離があり、反論されるとすぐに殻に閉じこもり、支配力を常に維持したいと強く感じていた。さまざまな報道によれば、彼は自分の過ちをほとんど認めず、感情を露わにすることも滅多になかったため、彼との心のつながりに安心感を感じる同僚はほとんどいなかったという。壁を打ち破ることができたのは、プロダクトデザイナーのジョナサン・アイブなど、一部の協力者だけだった。



