-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
抵抗者でなく改革者であれ
編集部(以下色文字):有沢さんは大学卒業後、協和銀行(現りそな銀行)に就職すると、融資や渉外を経て、人事と経営企画を担当されました。管理職も経験していますが、一般社員の時代を振り返り、自分はどのような部下だったと思いますか。
有沢(以下略):従順に見えて、使いにくい部下だったのではないでしょうか。上司の指示に文句を言ったり、反抗したりすることはありません。ただし、納得できないことを命じられた時、そのまま受け入れるタイプでもありませんでした。
私が融資業務を担当していたのはバブルの最盛期で、電話一本で数十億円の融資を即座に行うようなスピード勝負の時代です。そのため、上司が私の担当先の社長から話を聞き、融資を指示されることもありました。しかし、担当者である私以上に、その会社のことを知る人間はいません。そこで、自分からあらためて訪問し、「そのお金は何に使い、どのように返済するのですか。借り換えが発生する場合、御社の成長につながるのでしょうか」などと直接尋ね、融資すべきでないと思えば、上司に代替案を示すようにしました。
直属の上司だけでなく、先輩にも同じような対応を取っていました。当時は先輩の融資案件の稟議書は若手が作成し、指示通りに作業することが当たり前でしたが、私はそれができず、違和感を覚えた案件に対しては「この案件はおかしいと思います。しかし、このような考え方であれば納得できます」と提案していました。
組織内での立場を考えると、生意気で、面倒な存在だったと思いますが、筋は通っていたはずです。批判するだけではなく、おかしいと思う理由を述べて、必ず代替案を提示することは強く意識していました。
筋の通った正論ほど、言われたほうは腹が立ち、拒絶されやすいのではありませんか。
正論とは単なる理想です。単に現状を否定して「こうあるべき」と語ることは誰にでもできますが、その理想をどのように実現するかまで語れなければ、上司にロジックで負かされます。私にはそのような危機感がありましたし、上司もそれを明確に求めてくるタイプの人で、とても鍛えられました。
ただし、理想だけで人は動かない半面、正論すら言えない人もいて、それはもっと問題です。あるべき姿を自分なりに考えることは非常に重要だからです。また、ロジックは必要ですが、それだけでは足りません。ある支店長から「お客様は理屈だけでは動かない。お客様に響く提案をするためにはパッションも必要だ」と教えてもらい、私はこの教訓をいまでも大切にしています。上司に負けないロジックを組み立てることは欠かせない一方、情熱を持って主張することも同じくらい大切だと思います。
上司を動かすためには、自分は抵抗者ではなく改革者だと思ってもらう必要があります。理想だけを語り、他人事のように問題を指摘する抵抗者でいたら、絶対に理解を得られません。そうではなく、みずから問題を解決しようとする改革者だと思ってもらえるか。その点は上司の信頼を大きく左右します。



