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AIはデフレをもたらす
この1年ほどの間に、経営層における抑えられないAIへの熱狂は、現実をわきまえた自制へと変わった。データサイエンティストやソフトウェア、トークンへの増えゆくコストを正当化するために、世界中の経営幹部がAIを期待から生産性へと移行させる競争にしのぎを削っている。
筆者らは長らく、AIの経済的影響はゆっくりと、不均一に顕在化するだろうと主張してきた。今日においても、AIが経済に及ぼす影響の度合いは依然として不透明だ。
しかし、ビジネスリーダーがAIにそのコストに見合う働きをさせる方法を見出したとしても、その先には、より存亡に関わる課題が待ち受けている。それは利益率をめぐる戦いである。
勝者の呪いと同じように、AIを生産性の向上につなげることに最も長けた業界ほど、最も熾烈なコスト競争と価格競争にさらされ、結果的に利益率の低下に直面する可能性が高い。経済を変革するようなテクノロジーは本質的にデフレをもたらすものであり、消費者を真の勝者にする。矛盾するようだが、生産性の大きな向上は、企業にとって利益の減少を意味しうるのだ。
テクノロジーのデフレ的性質を理解する
AIは驚異的なテクノロジーかもしれないが、AIが生産性の向上をもたらす方法はごく一般的だ。すなわち、投入と産出の比率を変えることである。広く普及したテクノロジーは、これを以下のいずれかの形で実現する。
1. より少ない投入量で、同じ成果を上げる
企業はAIを活用して、一定水準の実質産出量に対する投入コストを減らすことで、成功を収めるかもしれない。このコスト優位は、競合他社から市場シェアを奪うための値下げを促す可能性が高く、それが価格競争を引き起こし、全社の利益率が損なわれることになる。すべてのプレーヤーが価格競争に巻き込まれるが、相対的なコスト優位を持つ企業のみが利益率を維持できる。全員が競争に参加し、勝てるのは一部のみだ。
2. 同じ投入量で、成果を増やす
企業は投入量を一定に保ちながら、AIを活用して実質産出量を増やすことができれば、量的優位を築くことで成功を収めるかもしれない。その結果生じる供給ショックは、市場シェアをめぐる価格競争を引き起こし、利益率を浸食する可能性が高い。供給ショックが持続的で需要が非弾力的であれば、特にそうなりやすい。
3. 新しいもので古いものを代替する
企業はAIを活用して、まったく新しいビジネスモデルの開発を目指すことができる。これは、より持続的な競争優位を築き、利益率をめぐる目先の戦いを回避するチャンスとなる。ただし、テクノロジーが広く普及すると、イノベーションが模倣されるスピードも速まる可能性があり、市場シェアと利益率をめぐる戦いが新たに始まることになる。
生産性向上への3つの経路は異なるものの、同じデフレのダイナミクスに行き着く。テクノロジーの広範な普及は、その競争優位が持続的ではなくなることを意味し、生産性の向上は、利益率の拡大ではなく縮小を意味しうるのだ。
この課題をさらに複雑にするのは、変化の激しい業界では、実質的に3つすべての経路が同時に展開しうるという点である。例として、同じく広く普及したテクノロジーであるインターネットが小売業界にどう影響を及ぼしたのかを考えてみよう。インターネットは在庫管理やサプライチェーン管理のコストを減らした一方で、効率性と低い利益率を武器に競合他社を市場から締め出した大規模な事業者に戦略的優位を与えた。同時に、これらの大手小売企業は、広告やサードパーティの販売者を軸とした新たな事業を構築することができた。
テクノロジーによるデフレの実相
たえざる漸進的な技術革新が起きている自動車業界を考えてみよう。過去70年近くにわたり、テクノロジーが労働投入を着実に代替してきた中で(これは自動車関連雇用の相対的割合の低下に表れている)、より少ない投入量でより多くの成果が挙げられてきた。相対価格の着実な低下に見られるように、これが価格競争を引き起こし、その後に利益率の低下が続いた。数十年にわたり30%前後で推移していた利益率が、現在ではごくわずかな水準にまで削られている。
テクノロジーは、農業など他の産業にも同様の痕跡を残してきた。かつて食品は消費者の家計の40%以上を占め、農業は米国の労働者のほぼ半数を雇用していた時期もあった。機械化、肥料、遺伝子組み換えといった相次ぐ技術進歩によって、膨大なコスト(労働)の削減が実現した。現在では労働力のわずか1%しか農場で雇用されていない。そして食料品の価格高騰をめぐる昨今の騒動とは裏腹に、今日の米国人の家計に食品が占める割合は13%に留まるという事実に、相対的なデフレが表れている。
デフレは一様ではない
とはいえ、あらゆる業界が等しくテクノロジーのデフレ圧力に屈するわけではなく、まったく屈しない業界もあるかもしれない。どちらになるかを左右するのは、テクノロジーがどこに影響を及ぼすのか、そして競争の抑制要因と増幅要因である。









