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AIを安価に利用できる時代は終焉を迎える
企業によるAI活用は、大きな転換点を迎えようとしている。いま企業は、AI導入に補助金がついているような環境にある。企業向けテクノロジー市場では、大手ソフトウェアベンダーが、GPU(画像処理半導体)や推論処理、トークンにかかる多額のコストを水面下で肩代わりしてきたからだ。こうした顧客獲得策によって、「従量課金なし」「無料」「料金に含まれる」と謳われる高機能なAIエージェントが提供され、経営幹部の間に、予算面でも運用面でも安心して使えるという誤った認識が広がった。
その結果、多くの企業でAIの試験導入が経営陣の予想を上回る勢いで進んだ。ウーバーをはじめとする企業では、2026年のAI予算をわずか数カ月で使い切ったと報告されている。あるAIコンサルタントによれば、従業員に付与するライセンス数に上限を設けなかったため、わずか1カ月で5億ドルを費やした顧客もいたという。企業はAIを試し、業務プロセスに組み込んでいくだけで、ベンダーが補助する利用枠を超えるようになった。
しかし、そうした補助さえ縮小し始めている。価格が人為的に抑えられてきた時代は終わろうとしているのだ。こうした変革を支える企業に収益性を求める投資家の圧力もあり、企業向けのソフトウェア大手は新たな料金体系へと移行しつつある。
オラクルでは、基本モデルはサブスクリプション料金に含まれる一方、高性能モデルは利用量に応じて課金される。SAPも同様の仕組みを導入する予定で、単純な問い合わせは基本料金の範囲内に留めつつ、高度なAI機能には追加料金がかかる。
ワークデイは2027年1月31日に新たな料金体系へ移行する。それまでは「顧客が利用状況を把握し、最適化する間、APIの超過利用分には課金しない」と同社は筆者へのメールで説明している。この猶予期間を設けるのは、明確に「AIやAIエージェントの導入を遅らせないため」である(なお、ワークデイは、レッドスレッド・リサーチが運営する「テック・コンソーシアム」のメンバーである。同コンソーシアムには20社を超えるHRテクノロジーベンダーが参加し、会費を支払っている)。
料金が上昇しても、AIを利用する価値は十分にあるかもしれない。その利点は多岐に渡る。しかし、この新たな現実に対応するには、綿密な戦略が必要である。重要なのは、AIへの投資はもはや単なるソフトウェア調達の問題ではなく、組織設計の問題であると認識することだ。
企業がAIエージェントを大規模に導入すると、自社でコントロールできる人件費から、外部に支払う変動的なトークン消費へと資源配分の構造が変わる。そこには、不確実性に起因する大きなリスクがある。
この不確実性に対処するために、リーダーが実行すべき3段階のフレームワークを紹介しよう。
AI利用量とコストの変動幅を把握する
AIトークンをどれだけ購入すべきかを考えても、それだけでは意味がない。AI全体の予算を決めることも同様である。長期的に見て、その投資からどれほどの価値を得られるかはわからないからだ。エージェント当たりの利用回数、1回のリクエストで消費する単位数、1単位当たりの価格といった主要な料金要素は、自社ではコントロールできない。
この点を説明するため、筆者は2026年のオラクルの「アナリストデイ」の現地レポートに記載された数字を使って試算した。同社の料金体系では、無料の基本利用枠を超えて高性能AIを利用すると、基本的なリクエスト1回につき、利用量の課金単位である「AIユニット」を5単位消費する。現時点では毎月2万AIユニットが無料で提供されているが、この無料枠がいつまで続くかはわからない。また、1ユニットで実際にどれほどの処理ができるのかも明確ではない。
こうした不確実性によってコストがどれほど大きく変わるのか、仮の例を用いて考えてみよう。従業員1万人の企業が現在、高性能のエージェント型システムを一つだけ試験導入しているとする。ベンダーは月2万AIユニットまで無料で提供し、それを超える分については1ユニット当たり1セントを課金している。







