ほしい情報を引き出す「変化球の質問」のコツ
Paul Taylor/Getty Images
サマリー:相手から情報を引き出す手段として「厳しい質問」は定番だが、AIなどを巧みに活用して用意された定型回答に阻まれやすい。そこで、最新研究が提唱するのは、相手の予測を外しつつ文脈に即した「変化球の質問」だ。相手の台本を崩すことで、その人の真の思考や新たな洞察が露わになる。本稿では、決算説明会におけるデータ分析から判明した変化球の質問の有効性を解説するとともに、面接や会議などの場面で実践するための7つのアドバイスを紹介する。

「厳しい質問」で情報を引き出せるとは限らない

 私たちは、厳しい質問をするよう教わってきた。面接官は、用意されたもの以上の回答を引き出すために、オープンエンドの問いを使うよう指導される。管理職は、部下が一般論を語っていたら、具体性を求める。記者や交渉担当者は、相手が論点をはぐらかせば追及する。目的は同じだ。相手が明かしたがらない情報を引き出すことである。

 とはいえ、厳しく聞こえる質問が、率直な答えを引き出すとは限らない。経験豊富な回答者はそうした質問を予測し、磨き上げた話を切り出し、会話を都合よく誘導できる。長々と答えても、何も明かさないことがある。難しい質問だからといって、必ずしも情報を引き出せるわけではないのだ。

 最近『ストラテジック・マネジメント・ジャーナル』誌に掲載された筆者らの研究は、別のアプローチを示唆している。つまり、回答者にとって予想外だが、答えられる質問をする方法だ。筆者らはこれを「変化球の質問」と呼んでいる。相手の台本を崩すことで、定型的な答えに頼りにくくなり、その人が実際にどう考えているかが表れやすくなる。

 筆者らの研究では、企業の四半期ごとの決算説明会における変化球の質問を分析した。こうした説明会では、経営陣がまず準備した説明を行い、その後、アナリストの質問に答える。ただし、変化球の質問の有用性を裏づける論理は、取締役会、ベンチャーキャピタルへのピッチ、採用面接、ストラテジックレビューなど、さまざまな場面にも広く当てはまる。

変化球の質問の有効性

 2011年から2021年にかけて米国上場企業5609社を対象に、12万6910件の四半期決算説明会の記録を分析した。経営陣は会議の冒頭で準備したプレゼンテーションを行い、その後、リアルタイムで質問に答えた。アナリストの各質問について、2つの特性が測定された。1つ目は予測困難性で、経営陣が準備した説明からどれだけ予測しにくいか。2つ目は話題関連性で、質問が説明にどれだけ密接に関係しているかである。両方の性質が強い質問を、変化球と見なしている。

 研究では、変化球スコアが高い質問ほど、経営陣が動揺している兆候が多く見られた。回答は長くなり、かつ「答えになっていない答え」になりやすかった。変化球の質問では、専門性の高い担当者に委ねるより、CEO自身が前に出て答える傾向が強かった。会議全体で見ると、変化球の質問は、株価の変動幅の拡大、異常収益の拡大、そしてアナリストの平均レーティングが変わる可能性の上昇とも関連していた。このパターンは、変化球が新たな情報を引き出し、アナリストや市場が企業の見通しを見直すきっかけになることを示している。

 また、どのような状況で変化球が生まれやすいかも調べた。スターアナリストや、専門家ネットワークにおいて中心的なアナリストほど、そうした質問をしやすい傾向があった。つまり、変化球は、熟練した調査者の商売道具である可能性がある。さらに、アナリスト同士で企業見通しが割れている時、企業の区分が難しい時、あるいはアナリストがその企業の担当を始めたばかりの時にも、変化球が多くなっていた。

よりよい変化球の質問をするには

 マネジャーがこの研究から何を得られるかを説明する前に、研究の限界にも触れておくべきだろう。筆者らが扱った場面はたしかに特殊で、評価者(金融アナリスト)は非常に知識が豊富でこなれており、経営陣の回答は厳しく精査され、即座に財務的影響を及ぼしうる。ただし、筆者らはこの結果が米連邦準備制度理事会の記者会見という別の場面にも当てはまることを示した。ここでの評価者は専門知識の面でやや劣るかもしれないが、やはり会見が持つ影響力は極めて大きい。

 したがって、採用面接や取締役会のような他の評価場面で直接のエビデンスを持っているわけではないが、この枠組みは広く適用できると考えている。特に、回答者に評価者の質問を予測して準備する動機があり、評価者に予測困難な質問をするだけの知識があり、即興の質問が可能な状況で有効なはずである。