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連載『成人発達理論で考える部下の育て方とリーダーの成長』はこちら。
【おすすめ記事】「叱れない上司」が「部下を成長させる上司」に変わる最初の一歩:成人発達理論で考える指導法
同じ研修を受けても、なぜ成長に差がつくのか
同じ日に管理職へ昇進した2人が、新任管理職研修を受けたとしましょう。研修では、部下の話を傾聴する方法、適切なフィードバックの与え方、仕事を任せる際のポイントなどを学びました。2人とも内容をよく理解し、研修終了時のアセスメントでも高い評価を得ています。
ところが、職場に戻ると、2人の行動には大きな違いが表れました。一人は、部下が自分とは異なる意見を述べた時、その背景を尋ね、相手の考えを踏まえながら判断しようとします。もう一人も、研修で学んだ質問の技法を実践していました。しかし、対話を重ねるうちに、最終的には自分があらかじめ用意していた答えへと、部下を誘導してしまいます。本人には傾聴しているつもりがあっても、部下から見れば、上司の正解を当てるための対話になっていたのです。
受けた研修は同じです。役職も同じであり、社内から期待される役割にも大きな違いはありません。それにもかかわらず、なぜ研修後の行動にこれほどの差が生まれたのでしょうか。
違いを生んでいるのは、知識や技術の量だけではありません。部下とはどのような存在か、管理職の役割とは何か、正しさや責任をどう捉えるか。そうした意味づけの枠組みが、2人の間で異なっていたと考えられます。
従来の人材育成では、入社年次や役職を基準に、提供する研修内容を決めることが一般的でした。しかし、同じ年次や役職に属しているからといって、全員が同じ成長課題を抱えているとは限りません。例に挙げた管理職に昇進したばかりの2人が思うようにマネジメントができなかった背景には、一人ひとりの違いを見る前に、所属するカテゴリーから必要な研修を決めてきたことがあるのではないでしょうか。
年次や役職は、発達状態を示すものではない
年次・役職別研修には、もちろん明確な利点があります。新任管理職に必要な労務管理や評価制度の知識など、共通して学ぶべき内容を効率よく提供できるため、その仕組み自体を否定する必要はありません。問題は、年次や役職が同じであれば、本人たちの能力や発達課題も、おおむね同じだと見なしてしまうことです。
実際には、同じ課長職であっても、その現在地は大きく異なります。業務知識や問題解決能力には優れているものの、自分と異なる意見を受け入れることが苦手な人がいます。反対に、複数の立場を理解し、対話を通じて考えを深められても、業務経験や意思決定のスキルが十分でない人もいるでしょう。
能力の現れ方も一定ではありません。慣れた業務では高い成果を出せる人が、関係者の利害が複雑に絡み合う状況になると、急に判断できなくなることがあります。上司の助言があれば力を発揮できても、一人で任されると動けなくなる場合も珍しくありません。
年齢、勤続年数、役職は、組織における位置を表す指標です。けれども、それだけでは、本人が何を理解できるのか、どのような条件で能力を発揮できるのか、現在の仕事に対してどのような支援を必要としているのかまではわかりません。
成人発達理論を人材育成に応用する際にも、年齢や役職と発達段階を安易に結びつけるべきではないでしょう。同じ年齢でも、物事の意味づけ方や発揮できる能力は異なります。さらに、同じ人物であっても、仕事の種類、心理的な状態、周囲から得られる支援によって、行動の水準は変動します。そこで必要になるのが、人材の現在地を、スキルと器という2つの側面から捉える視点です。
人材育成に必要なスキルと器の区別
ここでいうスキルとは、仕事を遂行するための知識、技術、判断方法、行動のレパートリーを指します。資料作成、データ分析、顧客への説明、会議運営、交渉、目標管理、フィードバックなどが、その代表例です。一方の器とは、自分、他者、組織、仕事上の葛藤を、どの程度複雑かつ柔軟に意味づけられるかという認識の枠組みを指します。






