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連載『成人発達理論で考える部下の育て方とリーダーの成長』はこちら。
【おすすめ記事】「叱れない上司」が「部下を成長させる上司」に変わる最初の一歩:成人発達理論で考える指導法
1on1が上司の「説教の時間」になっていないか
「プロジェクトが、思うように進んでいません」。1on1で部下からそう相談された時、上司はすぐに原因を探り、解決策を示そうとしがちです。「もっと早く関係者に働きかけたほうがいい」「相談する前に、自分なりの結論を整理しておこう」「相手の立場で考えれば、何をすべきか見えてくるはずだ」。いずれも、上司自身の経験から得られた、もっともな助言でしょう。
ところが、対話を終えてみると、話していた時間の大半を上司が占め、部下は「わかりました」と答えただけになっていることがあります。上司には、役に立つ助言を与えたという手応えが残りますが、部下の側には、自分で状況を整理し、問題の見方を変えたという感覚がありません。似た問題が起これば、再び上司の答えを求めることになるかもしれません。
助言すること自体が悪いのではありません。具体的な知識や方法が不足しているのであれば、上司が教える必要があります。問題は、答えを早く与えることで、部下が自分の考え方や反応を見つめる機会まで奪ってしまうことです。
1on1は、目の前の問題を上司が解決するための時間なのでしょうか。それとも、部下が自分で問題を捉え直し、次に同じ状況へ直面した時には、みずから考えられるようになるための時間なのでしょうか。この問いにどう答えるかによって、1on1のあり方は大きく変わります。
部下の悩みの原因は「スキル」か「器」か
部下が「会議をうまく進められない」と悩んでいても、その原因は一つではありません。議題を整理する方法を知らない、参加者の意見をまとめる技術が身についていない、時間配分の経験が不足しているのであれば、主な課題はスキルにあります。この場合には、会議設計の枠組みを示す、上司が進行例を見せる、事前にリハーサルをするといった支援が有効でしょう。
一方、反対意見が出た瞬間に、「自分の能力を否定された」と感じ、急いで議論を打ち切ってしまうのであれば、技法を教えるだけでは十分ではありません。異論をどう受け止めているのか、リーダーはどのように振る舞うべきだと考えているのか、自分の価値を何によって確かめているのか。そこには、仕事や他者を意味づける器の側面が関係しています。
スキルの不足に悩んでいる部下に、内省的な質問ばかり投げかければ、「具体的にどうすればよいのかを教えてほしい」と感じるはずです。反対に、器に関わる問題に対して技法だけを教えれば、表面的な行動は変わっても、負荷が高まった場面で同じ反応が繰り返されるでしょう。
そこで上司は、すぐに助言や質問へ進む前に、悩みの性質を見極める必要があります。必要な知識や経験が足りないのか。知識はあるものの、実際の場面で使えないのか。感情や評価への不安が行動を妨げているのか。それとも、自分や他者、役割についての暗黙の前提が、見える選択肢を狭めているのでしょうか。
1on1の質は、上司が優れた質問をいくつ知っているかだけでは決まりません。目の前の悩みが、スキルへの支援を必要としているのか、それとも器への働きかけを必要としているのか。その違いを見極められるかどうかに左右されるのです。






