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情熱を注いでいる人が自分で決めるからこそ
圧倒的によいものになる
編集部(以下色文字):出木場さんは米国インディードの買収を主導されるなど、リクルートホールディングスの成長に貢献する数々の革新的な取り組みを牽引してきました。さまざまな局面でリーダーシップを発揮されてきたと思いますが、ご自身が理想とするリーダー像はありますか。
出木場(以下略):僕は世界で一番、権威や権力のないCEOになりたいと思っています。
最終的に物事を決められる立場ではありますが、自分はほかの人より偉いわけでも賢いわけでもなく、CEOという係を務めているにすぎません。また、自分には本当にできないことばかりです。それなのに権威や権力を利用して指示を出し、自分の言った通りに動けているか監視したり、ましてや責任だけを押しつけたりすれば、それをされた人たちはつらくなるだけだと思いませんか。
僕はたまたま規模の大きな会社で働き、自分に欠けている部分を埋めてくれる人たちがいる中で、ビジネスをつくることがたまたま得意だったからCEOを担当しているだけで、営業や人事など別の分野では僕よりも優れた成果を上げられる人がたくさんいます。日本でも米国でも「権限を委譲するので、あなたに決めてもらいたい」と言ってきましたが、生兵法は大怪我のもとというように、自分のできないことにできるふりをして手を出すよりも、最初から得意な人にお願いしたほうがよいと思っています。
理想は、誰からも相談すらされない状況になることです。僕がその場で思いつく意見に、ほとんど価値はありません。でも、相談されたらつい何か言いたくなってしまうので、できるだけ聞かないでほしい。「オフィスをリニューアルするからデザインを確認してほしい」と言われたら、「ここの色は明るいほうがいいかもしれないね」と伝えてしまうかもしれませんが、思い付きで動かされた人たちは楽しくありませんよね。
リクルートホールディングスが大切にしている価値観の一つに「個の尊重」(Bet on Passion)がありますが、組織として最も大切なのは、この会社で働く人たちが日々、自分の仕事に情熱を注げる環境をつくることだと思っています。目の前の仕事と真剣に向き合い、パッションを持って取り組んでいる人が決めるからこそ、圧倒的によいものができます。僕は特にコストを抑えようとしがちで、自分の感覚で「あれもいらない、これもいらない」とやっていたら、プロダクトの質を高める機会を奪ってしまうかもしれません。社員からノベルティを見せてもらった時、「格好いいけど、いくらかかったの」と尋ねてしまったことがあり、あんなつまらない質問をすべきでなかったと反省しました。