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リーダーシップは性質ではなく
活性化すべき「状態」である
リーダーシップは膨大な勉強量と訓練を通して磨かれるというのが、昔ながらの定説だ。相手に影響を与え、感化し、導く。信頼を築く。重要な会話を進める。フィードバックを与える。人々の行動を変えさせる。これらの方法をエグゼクティブに教えるプログラムに、多くの組織がとてつもない時間と資金を投じている。意欲的なリーダーたちは、複雑なリーダーシップの機微を理解しようと、書籍を読みあさり、セミナーに参加し、メンターを探し求める。
筆者のリサーチによれば、コンピテンシー重視の従来の試みを補完し、加速できるアプローチがある。それは脳の神経回路という、誰もが持っているが、仕事に常に活かしているとは限らない機能を活用することである。リーダーシップとは後天的に獲得すべき「性質」ではなく、活性化すべき「状態」だと、筆者の研究結果は示唆している。傍観者としての学習から、その瞬間に即した統率へと軸足を移すことにより、エグゼクティブは真の飛躍を遂げることができる。
コロンビア・ビジネススクールの人気コースの土台にもなっているこのリーダーシップモデルは、筆者が自身のコンサルティング会社メントラ・インスティテュートと、そのチームとともに取り組んだ仕事から生まれたものである。筆者らは2006年、重大な局面で個人が期待を大きく超える働きをした事例を集めて、1000件以上の革新的なリーダーシップの瞬間を蓄積するリポジトリの構築を始めた。2022年には、知見をまとめた書籍Inner Mastery, Outer Impact[注1]を上梓。模範的リーダーシップの主な考え方を紹介し、リーダーはみずからの内なるコア──その人の最大のポテンシャルが秘められた領域、いわゆる「最高の自分」──を活用することで、それを体現できると説いた。