中国と欧米の職務慣行は大きく異なる。欧米流リーダーシップしか身に付けていないアメリカ人マネジャーが中国に赴任したら、最初に直面する課題は何だろうか。その対処法は当然、日本人にとっても参考になるだろう。
コーチへの質問
「中国への海外赴任が決まり、現地でいくつかのチームを管理することになりました。しかし、これまで自分がリーダーとして実践してきたことは、中国ではほとんど通用しないのではないかと思います。中国にうまく適応する方法について、アドバイスをお願いします」
ゴールドスミス
一流の起業家で著述家のウィリアム・バイアムは、このテーマについてLeadership Success in China: An Expatriate's Guide(2008年、未訳。「中国でリーダーシップを発揮する方法」)を書いています。人材コンサルティング企業ディベロプメント・ディメンションズ・インターナショナル(DDI)の会長兼CEOであるウィリアムは、さまざまな企業のリーダーシップ戦略とそのグローバル化を支援してきました。彼の見識の一部を紹介してもらいましょう。
ウィリアム・バイアム
質問者の不安はよくわかります。中国の文化は非常に独特です。長く続いてきた歴史のうえに成り立ち、50年以上にわたる共産党政権の影響下にあります。最近では、若手有望人材への過剰な期待による弊害も見られます。欧米流のリーダーシップの手法のなかには、中国で通用するものも少しはあるかもしれません。しかし多くは通用しないでしょう。以下に、予想される3つの課題とその対処法を紹介します。
1. リーダー像の違いを理解する
中国では、部下は上司に対して、あたかも家庭において親や保護者が子どもに相対するような接し方を求めます。それと引き替えに、彼らは良きフォロワーとなり、上司の期待に応えようとしてくれるのです。ひとたびリーダーシップが確立されれば、上司と部下の個人的な結びつきは、おそらくあなたが欧米で経験した以上に強いものになるでしょう。たとえば、上司はチームメンバーの私生活に興味を示すのが当然と考えられています。
また、独特の文化的特徴、たとえば「メンツを保つ」ことの重要性なども理解しなければなりません。助けを求めることが無能や弱さの表れであると考え、何か問題が起きても上司に相談したがらない人もいるでしょう。部下の仕事の実態を知りたいのなら、上司は詳細な報告を求め、事実調査にベストを尽くす必要があります。