経営陣の会議を企画・運営するブレグマンは、会議をダメにする最大の要因は「パワーポイントのプレゼン」であると断じる。会議の本来の目的を取り戻し、さらに組織のタテ割りの弊害も打破する方法をご紹介する。


“最悪だった。自分だけじゃなく他の参加者もみな、つまらない思いをしていた。誰も集中していない。自分はこういう会議を進行するのが下手だ。でも、すごく重要なことが話し合われる場だから、もっとうまくならないとだめだ。いい方法を見つける必要あり。”

 これは、7年前に私が日記に書いた文章だ。この会議のことは、今でも覚えている――私が会議の運営について考え直すきっかけとなったのが、この時だった。あるCEOとその直属の幹部チーム、そして私の計10人ほどが集い、2日間のオフサイト・ミーティングが開かれた。邪魔が入らないよう、会場にはホテルが選ばれた。会議の目的は、来年の計画について話し合い、合意すること。いわゆる戦略オフサイト合宿である。

 私は事前に綿密な準備をしていた。まず、チームの各メンバーと1対1で面談し、戦略に関するアイデアと、その実行を阻む潜在的な阻害要因について意見を集めた。それらを元に、私は2日間の会議のフローを組み立てた。そしてチームのメンバーには、各自の担当部門の戦略を発表するためのパワーポイントを用意してもらった。

 結果、どうなったか。各人が戦略を発表している最中に、他のメンバーが取った行動は次のどちらかだった――無視するか、揚げ足を取るか。

 プレゼンテーションに対するこうした反応は、ほとんどの会議で当たり前のように見られる。それらのプレゼンは洗練されていて、完成度が高く、そして聴衆を満足させるようにつくられている。同時に、スピーカー自身がいかにその話題に精通しているかをアピールするためのものでもある。聴衆が無視するのは、彼らが何も責任を負っていないからだ。そして無視をしない聴衆にとっては、自説の完璧さをアピールする人が目の前にいたら、その揚げ足を取るほどおもしろいことはない。

 以降の7年間、私は運営についてさまざまな実験を行ってきた。チーム・ビルディングを実践したり、会議のあいだ部屋の最前列に常駐したり、会議への参加そのものを取りやめたりしたこともある。コミュニケーション法やチーム・ダイナミクスといった、会議運営に必須のスキルを指導したり、CEOに会議進行の役目を負わせたり、CEOを会議に参加させなかったり、ほかにもいろんなことを試してみた。

 そうこうするうちに私は、「素晴らしい会議」と「悪い会議」を分ける最大の要因に気がついた――パワーポイントである。最も素晴らしい会議では、パワーポイントは使われないのだ。

 パワーポイントのプレゼンはどうしても、一人芝居に終わってしまう。そこでは「答え」を示すことが重視され、聴衆はみなスクリーンの方向を向いている。しかし会議とは、対話でなければならない。答えではなく質問を重視し、人々は互いに顔を向き合わせるべきである。ばからしいと思われるのを承知で言うが、プロジェクターの立てる雑音さえも対話を阻むのではないだろうか。

 高給取りの幹部たちを一堂に集めると、会議はとても高くつくことになる。だから彼らは、各自の進捗報告をするのではなく、課題について深く論じ合うべきだ。