3.参加の敷居を低くする
 コンペの初期段階で重要なのは、できるだけ大勢の、多様な人々から、できるだけ多くのアイデアを出してもらうことだ。P&Gが運営するオープン・イノベーションのプラットフォーム、「コネクト・アンド・ディベロップ」のサイトでは、氏名とメールアドレス、現住所さえ記入すれば、誰でもアイデアを提出できる。自社の応募フォームに質問事項が延々と並んでいるのなら、つくり直したほうがいい。また、あなたが自分のチームに提示しようと考えているビジネス課題について、自社の管理人が話を聞きつけ関心を示しているとしよう。彼にも貢献してもらわない手はない。もしかしたら、最も革新的で破壊的なアイデアが飛び出すかもしれない。

4.チームでの参加を奨励し、ネットワークを構築する
 ハルト・プライズが取り組む社会問題は、規模が大きく複雑なものが多い。隣接する学術分野からアイデアを取り入れ、解決策を考案し、堅実な実施計画を立てるためには、専門知識が必要であり、それをたった1人の個人が持ち合わせていることはめったにない。一方、多彩な顔ぶれを擁するチームからは、1人ではとても考えられないような解決策が生まれる。たとえばネットフリックスで優勝したチームは、元は別々であった複数のチームが合体した集まりであった。高い目標に到達するために、それぞれの専門性や部分的な解決策を持ち寄って協力したのだ。同様の例として、NASAとXプライズ財団が共同開催した「ノースロップ・グラマン月面着陸競技」で優勝した、航空宇宙開発企業のアルマジロ・エアロスペースが挙げられる。同社はこの課題への挑戦を、テキサスのゲーム・プログラマーと地元のロケット工学ファンによるベンチャーとして始めた。

 チームでの参加を奨励するとともに、もう一歩踏み出して、ネットワークを構築しよう。メンターやコーチ、審判、イネーブラー(実現を後押しする人)たちのつながりだ。こういったネットワークは、あなたのイニシアチブを通して生み出された優れたアイデアを精緻化し、テストし、本格展開するための助けとなる。そして、ブレークスルーとなるイノベーションを促すだけでなく、長期的な成功をもたらすだろう。

5.ツールキットを提供する
 興味を抱いた人たちがコンペに参加することになったら、彼らを成功させるためのツールを与えなくてはならない。社会問題への取り組みなら、IDEOが開発した「人間中心のデザイン・ツールキット」を用いることができる。民間部門の課題であれば、既存のイノベーション・プラットフォームへの委託を検討しよう。オーガナイザーとして、わざわざ一から取り組む必要はない。既存のプラットフォームのどれかを活用し、共有を許してくれる人たちから材料を借りよう。

 あなたが取り組もうとしているのが、大きな社会問題を解決するイニシアチブであれ、単にビジネスの目的にかなう独創的なアイデアの探索であれ、クラウドを最大限効果的に活用するためには上記のガイドラインを用いるとよい。あなたは、ビジネスに有効な破壊的アイデアを見出すために、クラウドの知恵を求めたことがあるだろうか? もしあるのなら、このガイドラインに何を付け加えたいだろう?


HBR.ORG原文:Create a Crowd Competition That Works July 25, 2013

 

アーマド・アシュカー(Ahmad Ashkar
学生を対象に社会貢献のソリューションを募るクラウドソーシング・プラットフォーム、ハルト・プライズの創設者兼CEO