未来を知ることは誰にもできないが、だからと言って未来について心配しなくてもよいということにはならない。何が起きるか知ることはできなくても、起こりうること――つまり将来起きる可能性が最も高い出来事――を特定し、それにどう対処するかを考えなくてはならない。
戦略上のネットワークが必要な理由は、あなたが身を置く分野に変化をもたらす力が他の分野から来る可能性が高いからだ。はるか遠くに表れる変化の波を、最初に何らかの方法で認識しなくてはならない。変化が目前に差し迫ってからでは遅いのだ。そこで、戦略上のネットワークがものをいう。
このネットワークは、社内外の「見張り役」によって構成される。あなたの分野と外部の世界が接する境界線で働き、その先の世界まで見渡してくれる人々だ。破壊的な変化をもたらすのはどの世界なのか、予測するのは不可能だ。複数の見張りを立てなくてはならない。そして、このような関係性は自然に出来るものではなく、意図的に築く必要がある。そこが難しい部分である。
幸いなことに、見張り役とあなたの関係性は多くの場合、社会学者が言う「弱いつながり」(ウィークタイズ)となる。彼らとの接触の頻度はごく限られる。月に1度、場合によっては年に2~3度程度であろう。しかし、1度つながりができてしまえば、時折のeメール、電話、コーヒーを飲みながらの談笑、共に出席する会議での立ち話などで関係性を維持できる。そうすることで、見張り役はあなたの関心を理解し、あなたの世界に影響するようなことが彼らの世界で起きた場合には知らせてくれるだろう。
あらゆるネットワークと同様に、戦略上のネットワークも相互利益の上にのみ成立する。あなた自身も、自分の世界で相手のために見張り役を務めるのだ。相手の関心や目標を理解し、それらに影響するようなことがあなたの世界で起きた場合には、相手に伝えよう。
リーダーシップと経営の大部分は、将来へのビジョン――あなたやチームがどこを目指し、どんな未来をつくり上げようとしているのか、という認識――の上に成り立っている。ビジョンを定め、そこに向かって前進し、未来で成功を収めるためには、自分の世界の周縁部にいる人々と広範なネットワークを築いていかなくてはならない。
HBR.ORG原文:The Three Networks You Need March 3, 2011

リンダ・A・ヒル(Linda A. Hill)
ハーバード・ビジネススクールのウォーレス・ブレット・ドナム記念講座教授。経営管理論を担当。主な著書にBeing the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader(邦訳『ハーバード流ボス養成講座 優れたリーダーの3要素』日本経済新聞出版社)がある。
ケント・ラインバック(Kent Lineback)
著述家。リンダ・ヒルとの共著Being the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader(邦訳『ハーバード流ボス養成講座 優れたリーダーの3要素』日本経済新聞出版社)がある。