自分と似た人物、あるいは親しい関係者のみでネットワークを形成したい――これは人の本能だが、副作用もある。情報の閉鎖性(フィルターバブル)を招き、経験と視野を狭めるのだ。これを打破し人生に多様性を取り入れる5つの方法を、1999年マッキンゼー賞受賞者ヘーゲルと元パロアルト研究所所長の認知科学者ブラウンが提案する。

 

 人は本能的に、自分と同じ興味を持つ人間を探し求める。これは不思議なことではなく、プレッシャーと不確実性が高い時代には特にそうだろう。このような時代に、自分を取り巻く不測の変化から身を守ろうとして、慣れ親しんだものを追い求めるのは無理もないことだ。だがそうすることで、私たちは無意識のうちに「同質性の檻」に自分を閉じ込め、世界を見る周辺視野と自身の選択肢を狭めることになりかねない。その結果、予期せぬ新たな方向からやって来る出来事やトレンドに対して、ますます無防備となり不意を打たれやすくなるのだ。

閉じこもるインターネット』(2012年、早川書房。原題The Filter Bubble)の著者イーライ・パリサーによれば、この視野狭窄に拍車をかけているのがインターネットである。オンライン検索の結果だけでなく、日常的な閲覧においてさえも、特定のトピックや人物が私たちの知らないうちに取り除かれているという(フィルタリング技術によって、ユーザーの特性に合うと判断された情報のみが表示され、それ以外の情報から隔離される状態を、パリサーは「フィルターバブル」と呼ぶ)。さらに悪いことに、ハーバード法科大学院教授のキャス・サンスティーンによれば、人は結束力の高い集団に加わると、より過激で頑固な考えを持つようになるという。

 結論を言おう。私たちが行なう選択や使用するテクノロジーは、自身が得る経験の範囲を徐々に狭めている可能性がある。私たちを無能にする恐れがある「フィルターバブル」の影響に対抗するには、似た者同士の居心地よさを追い求めてしまう自然な本能を克服する必要がある。以下に、その方法を提案したい。

1.自分のネットワークを見直し、再構築する
 ネット上のSNSの出現により、自分の社会的ネットワークの実情――自分は誰と最も頻繁にやりとりをしているのか、その相手は自分とどの程度似ているのか、など――がますます明らかになっている。

 自分のネットワークの周縁部を見渡して、「弱いつながり」(weak ties)を探ってみよう。つまり、顔を合わせただけの人や、自分とまったく異なる分野にいる人だ。ネットワークの周縁部にいる人々のうち、最も自分と違っていて、親しくなれば自分に恩恵を与えてくれそうな相手は誰だろうか。自分の興味に隣接する領域に携わっていて、まだ会ったことがない人々と知り合うために、SNSをどう利用できるだろうか。毎週ネット上で、友だちの友だちで自分と最も異なり最も興味深い人を見つけ、自己紹介しよう。