リーダーに求められる要件を上げると、まるでスーパーマンのような人間像が頭に浮かぶ。実際に組織のリーダーはそのような完璧な人間ではない。では、完璧でないリーダーが強い組織をつくるにはどうすればいいのか。


 企業の経営者にお会いしていつも思うのが、魅力的な方だというものです。小学生のような感想ですが、何十人、あるいは何万人もの組織のトップに選ばれた人に、人間的魅力のない人がいるはずはありません。「この人について行こう」と思わせるものがあって当然です。その何かが、温厚な性格なのか、鋭い戦略眼なのか、壮大な大局観なのか、それこそ人それぞれです。魅力的であることに間違いはありません。

 一方で、リーダーに必要な用件とは何か。この議論をすると、ビジョン、共感力、実行力、包容力、決断力など多くの要素が挙がります。それを真面目に考えてしまうと、そんな完璧な人の数よりも、世の中、経営者の数の方が多いので、多くの経営者はその資質を持っていないに違いない、という結論になります。

 そこで高業績を上げている経営者にお会いして思うのが、優秀な人材を身近に置いているということです。恐らく、そのような経営者は、自分の長所と短所をよくわきまえているのでしょう。リーダーに必要な資質を自分がすべて持ち併せていないなら、チームでそれらを満たそうと人材を集めているようです。

 外資系企業のトップから日本企業に転じたある経営者も、「トップに就任して最初にやるのはチームづくり」と明言されていました。この方も自分のウィークポイントを理解し、それを補う人材を近くに置くそうです。

 この補い合う関係は組織についても言えそうです。今号は「最強の組織」を特集しましたが、人材の質の平均値が高い組織が「強い組織」ではないと実感します。むしろ、一人ひとりは凸凹の人材でも、組織全体で補い、それぞれが長所を発揮できる会社の強さを実感しました。そもそも、凸凹がない人材を集めようというのもムリでしょう。

 神戸大学大学院の鈴木竜太教授が書かれた論考が非常に印象的でした。鈴木先生は「関わり合う職場」というコンセプトを掲げていますが、その中身は、各自の主体性と規律と他人への支援の3つが両立した職場です。主体性と他人への支援や規律など両立しにくい概念かと思っていましたが、それを実現している企業の実例を挙げて、その秘訣を紹介してくれています。

 また別の記事では、創造性の高さを誰もが認めるIDEOでは、助け合いのなかから創造性が生まれると信じられているとのことです。

 組織での助け合いというと、集団主義的な精神や馴れ合いの文化を奨励しているかのようで、好きではありません。しかしここで語られているのは、それらと一線を画します。真に強い組織をつくるための要諦として読んでもらえれば幸いです。(編集長・岩佐文夫)