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効果的なプライシングとは何か
プライシングは経営者にとって、マーケティング関係では最大の頭痛の種である。巧みにこなさなければならない、というプレッシャーを最も強く感じる場面でありながら、自分のやり方でよいのか最も自信を持てないところでもある。プレッシャーがこのように強烈な理由は、たいていの場合、経営者が自分たちには価格決定権がないと思い込んでいるからだ。価格を決めるのは市場だと思っているのだ。
そのうえ、プライシングは目標を定めるのも結果を評価するのも難しい分野だと見なされる。経営者に、自社の製造部門の目標を決めるよう求めれば、生産量やコストといった具体的な目標を口にするだろう。生産性の尺度は何かと聞けば、サイクル・タイムと答えるはずだ。しかし、プライシングは事実をつかむのが難しい。ある製品の売れ行きがよく、市場シェアが増したと聞けばよい傾向に思える。だが本当は価格が低すぎることの表れかもしれない。しかも、幻の利益がいくらだったのかはだれの得点表にも記載されないのだ。まったくのところ、財務諸表に記載された数値からプライシングの成否を判断するのは危険な行為なのである。
とはいえ、「正しい」価格に近づくことで途方もない効果が得られる可能性がある。プライシングをわずかに改善するだけで、かなりの結果が得られることもある。たとえば利鞘8%の企業が実売価格を1%上げた時(販売量が安定したままだとすると)、その企業の利鞘による儲けは12.5%増えることになる[注1]。このため、よりよいプライシングにわずか一歩でも近づくことは、大きなメリットを生む場合があるのだ。